LGBTQ洋書読書会とか

新設Cチーム企画主催者が、元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでやってましたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報をごった煮状態で掲載していますv

WS報告「鳥、蜂、ユニコーン、オオカミ:性的虐待に対抗するために子供たちと性を語る」

「鳥、蜂、ユニコーン、オオカミ:性的虐待に対抗するために子供たちと性を語る」
Birds, Bees, Unicorns and Wolves: Talking With Children About Sex to Combat Sexual Abuse
1/21(土)9:00-10:30
【プログラムから概要】
クィアな親またはクイア/多様なジェンダーの子供を持つ親として、セックスという気まずい、しかし重要で避けて通れない話題について議論するのは何歳が適切なのか?学校で性教育をする機会はほとんど失われている。どうやって若者たちは重要な情報を得ることができるのか?何歳が適切なのか?子どもたちへの愛、セックスそして関係性についての社会的な語りをどうやって再構築していけるのか?個人的社会的(に許容される)セックスについての理解にどう取り組んでいけるのか?性的虐待に対抗するための仕組みと、子どもたちと若者たちの力となるツールとしての、総合的な性教育の理解のために協力しましょう。
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30人程度の小さなワークショップだったがおもしろかった。最初に隣同士2組になり、自分が性教育を受けた体験について、どんな性教育が理想的かを自己紹介とともに話し合うように言われたが、いつものごとく、両隣の人は私と逆方向の人とペアになり、ぼっち。いいもん。朝ごはん食べたかったし。気力があれば隣の人たちに混ぜてもらうのだが省エネモードだったので、ただ林檎食べながら隣人の会話に聞き耳を立てるのみでやり過ごす。ペアやグループでの話し合いを安全に活発に行うために次のようなグランドルールが配られていた。参考までに。

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■グランドルール
合意と相互尊敬は性解放ワークの基盤です
●「私」を主語に、一度にひとりずつ話す。(「私たち」と勝手にまとめない。)
●積極的な聞き手になる。自分の番で話すことについて考えるよりも、今話している人に集中すること。
●場を共有すること。参加しないとか、独り占めするとかは無し。
●お互いについてよく考える。
●何か言ったりやったりする前に、それがどんな影響を及ぼすかよく考える。
●最小限に反応し、最大限に行動する。
●時間と場所を尊重する。(迅速に答える、ケータイいじらない、休憩時間を守る)
●プライバシーを尊重する。その場で話されたことを勝手に他に漏らさない。
●納得したことを共有し、自分を大切にする。


全体のシェアでは、「快楽を基本とした性教育が必要」「異性愛中心主義でない多様性を包含したもの」「セックスを恥としてとらえないもの」「セックスを親密性と結びつけた説明があればよかった」「感性を大事にする性教育」「HIVやSITへの偏見を助長しない語り口」等々があげられた。印象としては、多くの人にとって性教育は非異性愛者として抑圧されたり、性的なことは恥という概念を植え付けられたりしてきた嫌な体験だったようだ。
その後、主催者の3人がそれぞれの性教育の体験を語った。ひとりは黒人女性で、性的虐待がある家族で育ったことを人種、階級、文化背景などと絡めて語っていた。幼い頃からきょうだいも自分も親戚からの性的虐待に合っており、母もその被害者だったが母からの無言の圧力でそのことは一切家族で話すことはなかったという。黒人であることで性的な対象であり得ないという社会からの偏見や圧力などもあり、被害を訴えにくかったりして、健康な自己肯定感を築くのが大変だったらしい。そもそもの身体的肯定感が低いため、先の全体シェアで出た「喜びベースの性教育」というのは、抑圧された身体である有色人種にとっては難しいことだともコメントしていた。
その話を受けて、会場からはインド系の女性が宗教的に厳しい家庭で育ち、性的なことはいっさい教わらなかったと言っていた。生理についても知らず、血が出て死ぬかもと思ったり、どう対処したらいいのかわからなくて、生理が来てからしばらくしてからナプキンの存在を知ったとも言っていた。学校で習う前に生理がくる子もいるので家で聞けるのが一番だよね。(私は初潮は中二と遅かったので既に学校で習って対処方法は知っていたけど、性自認男だった当時の中学生としては絶望中で、もちろん家族には言わず、こそこそナプキンを探して使っていたところを見つかり「あんた生理きてたの」と数か月後に赤飯を炊かれたのでだった。姉が二人いたのでナプキン入手などは困らず済んだ。)
主催者の二人目が自分の子育て体験を語っていておもしろかった。息子が3~4歳の時、肛門を触ったり指を利たりすると気持ちがいいことに気が付き「おかん、気持ちいいでこれすると!」と言うようになり、おお目覚めたなと思って「そうやねん、気持ちいいよなそれ。」と快楽肯定の方向で対応したとのこと。その後「おかん、指いれて!」と言ってくるようになり、むむ!これは、となり「そうやって楽しむのはいいことやけど、お互いの了解を得てからでないと、そういうことはできんのや。」息子「ぼく了解してるやん!入れて!」と言われ、むむ!「あんたのしたいことと、おかんのしたいことは違ってて、おかんは別に指入れたくないんや。」と返答したとのこと。その後、息子が十代に成長した頃、レズビアンのセックスが気になると言ったことがあったので、バービー人形を用意してこんな感じやでと実演したところ「もーやめてー」と言われたらしい。素敵なお母さんだよね!!性についていっさい語られることのなかった私の家ではありえない会話だわ。性教育に興味がある人でない限り、一般人だったらどう親が言って来たかがそのまま子供への対応になるよねたぶん。両親は親や周囲から語られてこなかったから、私たちにも話し方を知らなかったんだと思う。
その後、またペアになり、初体験の時に自分に足りていなかった情報、スキルはなんだったか?ということについて体験を話し合った。私とペアになった人は、初めての恋がいきなり不倫だったそうで(十代で重いよ!)健康的な信頼関係の築き方とか、周囲への助けの求め方などが当時必要だったと思うと言っていた。私は初体験と名付けたい体験は高校生の時で親友だったんだけど友達と恋人の境界がわからず「性的なこと」とはいろんなレベルで考えられることを知っていたらよかったと話した。性的欲望、恋人関係、親密な信頼関係、モノガミー、独占欲、永遠の誓いなどが「恋愛」という一言で片づけられていたように思う。全部ひとつにぶちこむの無理やし。それと、恋愛の始め方、続け方などはよく語られるが、平和的な別れ方を誰も教えない。LGBTQ業界で付き合う別れるとなると、別れ方は大事だと思う。コミュニティが狭くって絶対またどこかで顔を合わせることになるからだ。下手をすると、恋人と別れただけなのに、それに付随して友達全員を失ったり、コミュニティに行けなくなったりして生活すべてに関わってくるのだ。
全体の共有の時間では様々な意見が出た。
「Noと言う権利」
異性愛中心でない情報」
「性的行為をしなくても関係性を築けること(Aセクシュアルについて言及するなど)」
「体と欲望を理解する枠組み」
「自尊心の保ち方」(例えば黒人なのに性的に見られたなら、普通はそれ以下の扱いなのだからそれに感謝すべきなど。)
「セックスは気持ち良い、心地よい体験となること」
「体の快楽を探求してもよいという意識/恥ではなく」
「セックスについて語っても恥ずかしくない環境」という意見で紹介されていた絵本。
■Sex is a Funny Word

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「安全で平和的な別れ方(付き合い方や長期関係維持ばかり焦点が当たるため)」
「射精がセックスの終わりのサインではないこと(射精しないと終われないという思い込み)」
「愛と関係性のレベル分け(体、感情、社会的に準備できているかセックスをする前に確認すべき)」という意見で紹介されていたリスト集。

www.scarleteen.com



性的虐待は身体的なものだけでなく、精神的なものもあるということ」
「人との境界線の守り方」という意見のところでは、下記の「力と支配の車輪」が紹介されていた。DVの構造を図式したもの。
■Power and Control Wheel

www.youtube.com

日本語になってるやつ
■ドメスティック・バイオレンスが起こる力関係 - 神奈川県ホームページ

最後にツールキットを作成中なのでご意見募集中とのことだった。こうした細かい作業から実践的なキットが作られていくんだろうな。個人の体験を積み重ねていくことの大事さを感じます。地道、地味でも確実に良いものができそう。日本で感じてたことは、あちこちでバラバラに行っている事例研究が体系的にまとめられることがなくて現場に使えるものとして還元されない印象があったが今はどうなのや。「性はひとりひと違う、ゆえにそれぞれのケースは違う」というのは内側向きの個人尊重の視点で良いんだど、問題解決の視点からは法則性や解決法を引き出すため外向きに見て行かないとよね。ミクロとマクロ、個人を尊厳を守るということをピボットに、そのためにできることはあらゆる角度からやるという360度の視点で見て行く調整役が必要ですな。

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ざっくり上記のチラシの訳として。

「親、保護者の皆様へ。’お話し:親/保護者お話しキット’は、扱いにくい性についての話をどうやってコミュニケーションし、教育しそして乗り越えるかについての、コミュニティベースの手引きです。このツールキットは、セクシュアリティについて子どもたちと語り合うのを助け、子どもへの性的虐待を防ぎ、終わらせることにも役立ち、生活を良くします。コツや陥りやすい罠、成功例、ゲーム、恐れ、コミュニケーション方法など、共有したいことはありませんか?または他の人に聞いてみたいことはありませんか?」

いつかまた性教育の教材を作りたいと思っているので、このワークショップは参加してよかった。日本で性教育をやる時につきまとう、既存のカリキュラムや教育委員会など、いかに障害をくぐりに抜けるかということばかりを考えてしまうが、もし何の制限もなく好きなようにできるとしたら、どんなものになるだろうか。既にアメリカで出ている評判が高いものをチェックしながら、教材作りの参考にしていきたい。

大会で出会った友達がおススメしていた本。だれか日本語訳して。
■The Gender Book

 

■主催者団体  The HEAL Project