LGBTQ洋書読書会とか

新設Cチーム企画主催者が、元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでやってましたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報をごった煮状態で掲載していますv

アトランタ2日目 (WPATH)セッションメモ(2011/9/24)

セッション記録 

GIDという言葉はほぼ使われていない。トランスジェンダージェンダーバリアントが支流。カウンセリング、ホルモン、SRSの3つのセット治療法も古い。今はそれぞれの事情に合わせて臨機応変に使うのが主流になってきているようす。 
 

New Frontiers for Transgender Youth— Rob Garofalo, Anne Lou de Vries 

●ニューフロンティアトランス(オランダ、アムステルダム) 
・プログラムの歴史。1990年から16-18歳に対する対応を調査、検討し、ホルモン治療をOKに。2000年から12-16歳に対してホルモンブロックをOKに。このように若いころから準備をしているとやはりSRSがうまくいくし効果がよくでる。満足度も高いらしい。
・6か月カウンセリングの後、ホルモンブロックあるいはホルモン療法。ホルモンブロックは可逆だがホルモン療法は不可逆な部分も。 
・18歳以降はSRSに向けて準備。 
・12歳以下の場合、そのうち80%がゲイレズビアンになり、20%がトランスとなる追跡調査結果。なので若年の場合、トランスになるかは慎重に見極める必要がある。 
・思春期をすぎて性別違和を訴える場合はほぼ100%がトランスとなる。 
・12歳からの診断基準。長期にわたる性別違和、家族の理解、治療の理解など。他にもあったけどメモできず。子供なので理解が不十分な可能性があるので家族の理解とともにインフォームドコンセントの必要がある。 
・なぜ12歳からかというと、他の医療でも自己決定を認められる年齢が12歳だから。 
・トランスの子どもの特徴としては、①長期の性別違和がある、②SRSへの強い願望がある、③自分の体の成長による変化に恐怖を感じている。 
・トランスの子どもたちの直面することとしては、小学校では好きな性別で過ごせていても中学校に上がるときに学校がそれを問題にすることがある。SRSに対するアンビバレントな感情がある。SRSについてあとで気がかわることもある。 
・治療はチームで行われる。心理学者、精神科医ソーシャルワーカー的な人とか。 
・診断→3か月間で身体の調査、心理テスト。18歳でSRSの診断が可能。 
・7-8歳以下までの来院だとトランスではない可能性が高いが12歳以降の場合は確率が高くSRSの確率も高い。 
MtFの小学生のドキュメンタリー。「I am a girl」すっげ綺麗かわいい。友達ともいい関係。好きな男の子がいる。 
・オランダだから受け入れの寛容度がとても高い。 
・小学校でトランスしててもそのまま中学で受け入れてもらえるのか?→小学校でトランスできている時点で周囲の環境が整っていてサポートされてるので受け入れられやすい。拒絶されたり嫌がらせのある学校だったら転校するようにアドバイスする。 
・親のグループ、こどものトランスのグループなど当事者サポートが充実している。 
・移民などの子どもは少ない。サポートや情報が届いていない可能性がある。 
・12歳~ぐらいの子どもでFtMの場合、胸が大きくなってきた時にどうするか?→ナベシャツを着るようにすすめる。 
・子供は夢見がちだけれど、現実をちゃんと見てもらうようにこれからのことを具体的に説明する。SRSをやっても完璧じゃないということを理解して大人になってもらう。 

●移民、有色人種のトランスジェンダーユースのサポート 
・先のレポートは楽観的だったけどこのレポートは逆のことを言うことになる。 
・この会場は白人ばっかりだけど、自分たちがサポートしているのは黒人や移民、有色人種。 
・自分もゲイとして家族に理解を得られない状態で居た時は、(有名な活動家?アーティスト?の)MtFの人に勇気づけられた。「A tale of cities」(映画?) 
・自分たちの団体ではコミットメント、研究、調査、臨床を行っている。 
・20-25%が25歳になるまでにHIVに感染するという現実がある。アメリカではHIV関係の対策に予算がたくさんさかれているが有色人種などの場合、情報やサポートが行き届いていないということがわかる。 
・自分たちからするとホルモンをするかどうかというのは簡単な問題。それよりもホルモンをするかどうか、そこに至れるかどうかが大変な作業で地獄のさただった。また、ここ5-10年の間で臨床医がトランスのことに関心を持つようになったことで状況がすごく変わった。 
MtFのケーシーの例。(トランスユース。)ネットで知り合ったという43歳の男性とかけおちして都市に出てきて、その三か月後その家を追い出され、その二か月後シェルターに入るが生きていくためにセックスワークをすると言い始め、その三か月後、もっと稼ぐためにゴムなしでやるつもりだと言って、その四か月後、HIVポジティブになっていた。このすごい展開の速さ。勉強ができてスカラシップももらっていた子だったのに。 
・このような展開に陥るユースの特徴はソーシャルサービスから遠いということ。トランスであることで、貧困、心理的ストレス、うつ、自尊感情の低さ、薬物使用(麻薬も、ホルモン注射も、シリコンなども含めて。)セックスワークという展開になりがち。 
・「トランスジェンダーレズビアン、ゲイの健康」(全編のダウンロード可能な本) 
・今までの調査などの欠点は、FtMの研究がなされてないこと、予防疫学が主眼であること、長期的研究がないこと(その後どうなってるのかわからない。) 
・これからの調査に求められる視点は、マイノリティ分野、国際的、人口学的、ヘルスニーズとケア、介入の効果評価など。 
・これまでHIV系の調査をするときにコミュニティのニーズとのずれを感じてフラストレーションを感じていた。今後は調査報告書を造ることで法律制度化などコミュニティが必要としているものをつくるための基盤として使ってもらえるようなものを提供したい。実際に自分たちの報告書がきっかけで行政が提言を出した。 

・トランスのケアモデル 
行動学的アセスメント・教育的治療的エンゲージメント・リアルライフテストの重要性・ホルモンセラピー・ホルモンブロッカー・SRSおよびフォローアップ・長期的問題・骨密度・ワクチンを受けられる体かどうか・トランジションが体にどう影響を与えうるのか。

サザンカンフォートの豪華ランチに参加 
全米最大のトランスのお祭り。今回は900人の参加がありそのうち350人が初参加だったとのこと。TV系の人たちが主流な感じ。 

・全米各地で脱毛の開業をしている人たちのくじ引きゲーム。同じテーブルの人が当たってた! 
・宝くじ的なものを買うようにインフォメーションがあった。当たった人は半額もらえて来年のサザンカンフォートの参加が無料だとか。 
・ゲイの法律家の人の話 
ひとりのMtFの人のことが忘れられない。彼女はとても優秀な証券マンだったがトランスしたことによって文字通りすべてを失った。3年間完全に孤独してしまっていた。自分たちは全米どこへでもかけつけて力になるつもりだ。ハラスメント、暴力、雇用、IDの性別変更、保険などトランスの問題の力になる。 
・主催のMtFの人の話 
私たちは孤独ではない。もし孤独な人がいたらその人を探し出して家族になろう。コミュニティに出会えたことが希望だ。 

・スタンダードオブケア第7版の改定について委員から話 
私は元WPATHの会長だったがその頃からパラダイムシフトしたかった。まだこれから不十分な部分が改定されるとしても、この数年検討し議論を重ねてきた努力の結晶だと思う。新版は月曜日9/26にウェブにUPされることになっている。GIDという名前はもう使わない。どんなケアでも、どんな存在であっても、尊厳をもって提供されるべきであり、どんな属性かは関係ない。目的は変わってはいない。文言が変わったことは注目すべきだ。改定まで4年をかけて丁寧に議論されてきた。34人の多国籍な委員によって議論されており、欧米、北米中心主義にならないように配慮してきた。とはいえ、考え方や基盤が欧米であるのは確かだが、どんな文化であっても適用できるようにしている。ページ数が31ページから122ページとなって、そのうち22ページは参考文献の紹介となっている。 
包括的な内容になっていて、それはホルモン治療やSRSにとどまらない。GD=精神疾患として生涯にわたる疾患ではない。GN=先天的ではなく社会に寄るもの。専門家はトランスの人々が様々なジェンダーアイデンティティを表現、実現できるように助けるのが仕事である。患者が希望することに専門家が許可を出すのではなく。 
アドボカシー、偏見差別、スティグマの排除が明確に書かれている。 
それぞれの人に固有の状況があるので、それでもいいのだと読めるように高い柔軟性をもって書かれている。 
インフォームドコンセントの神話を助長しないような注意、コメント。 
ホルモン治療の前にそれらによる変化やリスクなどの情報をもっているべき。インフォームドコンセントが必要であること、オプションを理解してからの判断。 
心理療法は必ずしも必要ではない。専門家がするべきことが明記されていて、本人以外、周囲の環境についても書かれている。専門家の資格化や修士号取得以上を推奨するなど。
これまでの、精神療法、ホルモン治療、SRSの3セット療法については言及しておらず、ヘルスケアは多様であるという言い方に変わっている。ホリスティックケア(包括的)に変わってきている。 
TGジャーナルに掲載されてたくさんの意見が寄せられることになるだろう。それがさらに改善された第8版となることを期待する。 
・副読本がついている。コミュニケーション、心理療法、社会的。。。について。 
・大改訂した部分は、MtFの膣オペに診断書が2つ必要だったが、1つになった。性腺摘出について2つの診断書がいるのは変わらない。 
・1979?年、治療が医学的に必要であることを社会に広めるには大変だった。 
・あらゆるしばりをとっぱらってしまえばいいという意見もあるが、現実的にはそうはいかないし、法律家の人にがんばってもらわないといけない部分もある。 
・思春期以降の子どものケアについては、ホルモンブロックもSRSも年齢制限をもうけるというよりかは、個人の身体の成熟度をかんがみて対応するように変更。 
・医者は何もしないのが中立的でいいことではけっしてなく、適切なケアをするべき。