LGBTQ洋書読書会とか

元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでしたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報を掲載しています。

抑圧と解放のサイクル;人種平等のためのワークショップ

Creating Change 2018という全米最大のLGBTQの大会に参加した報告。大会は5日間にわたり200以上のワークショップ(WS)が開かれ5000人以上が参加するらしい。

印象としては白人と黒人、ラテン系が多くアジア人が少ない。通訳にスペイン語がついているぐらいラテン人口が高いようだ。手話通訳もついている。残念なことに今年はDSDs(身体の性の多様な発達・インターセックスと呼ばれていたテーマ)のWSがひとつもない!大会との間に何かあったんだろうか。分科会をするのにもお金を払わないといけないシステムに反感を持っている関係者も少なくはないだろうと想像する。

西洋式授業では当たり前なんだろうが、人数が多くてもファシリの質問にその場で大声で答えたり、マイクをもらいたいという手がたくさんあがったり、日本ではまず起きなさそうなことが起きている。WSの手法として参加者の声をどんどん拾うことがメインになっていて、まさに参加型、対話を作ることで、内容を構築していくのでとても手ごたえを感じる。

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1/24(水)抑圧と解放のサイクル;人種平等のためのワークショップ

このWSは一日がかりで、9時から17時までみっちり。800人の参加者が午前中前半はひとつの大きな会場で、後半は有色人種で初参加者、二回目以降、白人で初参加者、二回目以降の4つの分科会に分かれてワーク。午後は8つの分科会に分かれての人種差別をなくすための様々なアプローチでのワークショップ(WS)。最後に全体でまた集まりまとめをして終了。基本的にどれも、ペア、グループワークから全体での分かち合い、まとめという流れ。

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9時から10時半までの最初のオープニングでは、CCのスタッフが軽く自己紹介を回していて、名前、第三人称、人種アイデンティティの三つを上げていた。

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いくつかのお題が与えられてペアになって5分会話をするというのが3回程度繰り返された。お題は「なぜこのWSに参加したか」「何を期待しているか」「人種の話をする時にどんな気持ちになるか」「どんなことをすれば人種差別をなくせると思うか」などなど。

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またWSに参加する態度についてもしっかりと項目があり説明された。例えば「(ケータイとかいじらないで)参加に集中すること」「正直な自分でいること」「沈黙を大事にすること」「リスクを取ること」「対話が深い理解と受容を導くことを信じること」「自分のトリガーに気づきそれを扱うこと」などなど。

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 最後に「人種差別」「内的支配/内的抑圧」「白人特権」「白人至上主義」などについての用語を確認する対話。

ファシリが何事にも練習が必要。人種差別についての対話でだれもが失敗を経験するのは、練習せずに本番をしようとするからだ、今日は失敗することを恐れずに練習の場として活用し、本番は自分のコミュニティに帰ってから実践していってほしいと言っていたのが説得力があった。

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10時半すぎから12時半まで二つ目の分科会。私は二年目なので有色人種で二回目以降の分科会に参加した。(去年財布を無くした時に助けてくれたJasonがいてお礼を再度言えた。)
最初に、このWSはコミュニティ作りの作業でもあり、自分の深い部分を出したり共有する過程でもあるので、それをしやすくするように、近くの人とハグなどをして親しみを深めてと言われて、アメリカ的だなーと思いつつ隣の黒人の人と軽くハグをした。周囲の人はハグしまくっているがあまり乗れず。

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ファシリが「解放」という言葉から何を想起するか、浮かんだ言葉を言ってくださいと参加者に促すと、自由、弱さ、などいろいろな言葉が会場からあがった。続いて「トラウマ」からは何を想起するかという問いかけに、傷口を開ける、過去、など参加者が口々に思い思いの言葉を言っていた。

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最初のペアでは、どうして大会に参加しているか、人種差別を話す時のこれまでの体験などを話した。ペアになった人は、教会での人種差別の対話は難しいし、LGBTQであることも別の次元で差別があるので、問題は複雑と言っていた。

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次は、ファシリが取り組みを続けていくサイクルをどうやって形成していくかということで図を出して説明。サイクルに関連して、ファシリから体験が語られた。「黒人だが、親から近所の黒人家族とは家は違うんだ、ああならないようにしないといけないなど、黒人差別を内面化させられてきて、それを克服するのにとても時間がかかった。」(女性のクィア自認のアフリカ系アメリカ人で)「自分が話してる途中で白人男性が話をさえぎって意見を述べてきて、そそれを指摘したが、自分は正しい指摘をしたのに罪悪感を感じることがあり、自分の中に染み込んでいる従属性に気づいた。」など。

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それぞれの段階を具体的な内容は壁に貼り付けてある。壁のポスターに参加者にシールを貼っていくように指示がでた。緑はだいたいできていること、黄色はまだ取り組みを続けていること、オレンジは取り組むのが難しくて助けが必要だと感じていること、だ。

参加者(100人ぐらい)がだいたい全部まわってシールを貼ってまわった後、グループに分かれてどれに貼ったかそれぞれ発言していった。黒人の大学教授の人が、自分のメンテをしっかりしない限りは戦えないし、他人を助けられないし、白人と対等にやりあえる自信のある態度を保てないから、セルフケアに気を付けているとか、中東系の人が白人が大多数の場では自分の意見は取り込んでもらえないと感じるし、自分が有色人種を代表してしまうような気がして意見を言うのに気が引けるとか言っていた。

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全体の分かち合いでは、戦いばかりでセルフケアがおろそかになっているという意見もあり、ファシリも強調して、セルフケアの重要性を主張していたのが印象的。最後にファシリが「今日出会った人たちと連絡先を交換して下さい。ここからネットワークを始めて自分たちのリソースを作っていってください。」と参加者のコネクション作りを促していた。なるほど。

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昼休憩をはさみ、14時から16時半まで三つ目の分科会。ここでは去年から参加してみたかった白人向けの具体的に内省していく分科会に参加。60人ぐらいの白人の中でアジア人一人。超居心地が悪くて浮いてて辛い。最初にファシリがなぜこの分科会に来たかという理由を参加者からピックアップする際に、ここぞとばかり挙手して日本から来ていて日本では自分は特権を持っている立場なのでどうやって人種差別に取り組めるか知りたいので来ていますと説明できたので、勝手に一安心。

最初、ファシリの一人が「親戚や親に人種差別者がいて困りますよね。」から導入がはじまってちょっとうけた。「この中に、自分の中の隠れた白人優位主義を見つけ出すのが楽しみで来た人はいますか?」というとシーンとする会場の後ろの席に一人だけ「はいはーい」と手を挙げるおばちゃんがいてみんなが笑った。無垢なおばあちゃんの参加者が「私はいい人よ、みんなのこと愛してるもの。それなのに、私にも差別心があるのでしょうか?」ファシリ「そうなんです、いい人なのに白人優位主義はあなたの中に確実にあるのです。それを今日は考えていきましょう。」他の参加者からは「このWSに来たくなかった。自分はいい人でいたいし、差別心を持っていることを認めるのは怖い。」するとファシリが「来てくれてありがとう、とても重要なことを言ってくれました。みんなそこからスタートするので大丈夫。」

最初のワークは「5歳児にどうやって人種と人種差別を説明するか」で隣に座っていた白人トランスぽい人が声をかけてくれてペアで話し合った。アメリカでも人種問題の授業は特別にあるわけではなく、歴史として学ぶだけで、今の問題として話し合う機会は学校ではなかったと言っていた。全体の分かち合いでは、それぞれのペアで話したことを有志が挙手で紹介して、いろんな説明の仕方があっておもしろかった。「昔昔、白人が自分たちが一番優れているって言いふらしはじめて、そうしたら他の人種の人もそれを信じ始めてしまい、白人が都合がいいように世界を変えてしまったんだけど、白人が一番優れているというのは嘘ですよ。」「いろんな人種がいて、白い人から黒い人まで住んでいる地域や日の当たり方でいろいろなんだけど、白い人はたくさん飴をもらえるのに、黒い人やその他の人は飴がもらえないということ。」「昔、白人が世界中に出ていって各国の人をいじめまわって、自分たちが一番だと言ってまわったから、飴を独り占めしてもいいことになってしまった。」などなど。参加者からは「有色人種の子はすでに5歳で人種差別を体験して気づいているから説明しなくてもいいだろうが、白人の子は気づいていないので説明の仕方に気を付ける必要がある」など。

次は「人種差別」「白人特権」「白人至上主義」という言葉の定義について話し合うワーク。女性ふたりとグループになり、一人は日本に住んだことがあると話してくれた。「知らないこと、馴染みがないことって、容易に悪い風に言うことができるから、それが人種差別の根本じゃないか」などなど。その後、みんなで辞書で定義を確認。

次は「ペアになってからお題を伝えます」という含みがあったので、これは白人同士の方がよさそうだなと感じて、後ろの席に退場した。が、親切にも二人の白人女性がペアになっているところに一緒に話しませんかと呼んでくれたのでお言葉に甘えて参加した。お題は「いつ人種差別があることに気づいたか」でグループでの話し合いでは「子供の頃、有色人種の友達を家に連れて行ったら、祖父が人種差別発言をして母親と自分はぎょっとしたが、幸い当人には聞こえてなかったので良かった。」「白人ばかりの田舎で育ち、人種差別的発想が当たり前だと思って生きてきたが、50歳ぐらいになってそれは間違っているのだと気づき、こうしたWSに参加するようになった。」などなど。

次のお題は「いつ白人の方が他の人種よりも優れていると思ったか」という核心に迫る内容。「小学校などでスカラシップを取るのがいつも白人、たまにアジア人だったので、子供心に黒人やラテン系は勉強に関心がないんだろうと思っていた。がのちにそれが学校システムが白人用にできているからだと気づいた。」「父親が特定の地域に住んでいる有色人種の人たちのことを悪く言うのでそのまま鵜呑みにしていたが、母親が違う意見だったので誰かの主張も疑ってみないとと思うようになった。」「歴史の授業で歴代の大統領がすべて白人だったので、白人はリーダーシップがあって優れていると思っていたが、母親にそれを言うと黒人が大統領になるのは許されてなかっただけと言われて気が付いた。」などなど。

ここで最初の「5歳の子供にどう説明するか」の重要性があらわになってきた。ファシリの一人が言っていたのは、白人は子供の時に大人から人種については語ってはいけないことだと学び、「語らないこと」が白人の中で伝統的に受け継がれていくと指摘。
白人が無自覚にやっている白人至上主義に基づいた行動41項目が書かれた紙が配られて、自分とどれだけ関連しているか時間を設けてしばらく個人作業。その後、全体での分かち合いで個人が体験を話した。人種差別者の親戚をたくさん持つファシリの一人ががクリスマスなどの親戚の集まりには黒人人権運動のTシャツを着て行き、対話を開くきっかけにすると言っていたのが印象的。リストの中に関連して参加者からいろいろな体験が語られた。「思い返せば今まで自分が出会ってきた学校の先生はすべて白人で有色人種の先生に教わった経験がない。」白人が競争主義というのを受けて「有色人種の一番のアライになろうと他の白人よりも優位に立とうとする白人がいてイラっとする。そういう人は人種差別の問題を利用して自分が主役になりたいだけ。本来のアライとしての役割をわかっていない。」

またTEDトークで人種差別への取り組みを説いている7分のプレゼンを見て、いつも偏見や特権に敏感であるためには、日々のチェックが必要で完璧になるのは無理だけど、ましにしようという努力は続けていけるというポイントだったと思う。ファシリが「私もいつも自分のことを点検しています。ひとつ偏見を捨てても、また別の偏見を拾ってきてしまう。それは終わることのない作業。でもやり続けるしかないのです。」

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17時から30分全体でのまとめのためまた大会場へ集合。グループに分かれてWSを通じて学んだことで「やめること」「始めること」「続けること」は何かをシェア。「聞くこと、質問することをもっと重視するようにしたい。」「発言の前に少し間を置いて自分の考えを客観的に見たり、他の人が発言できる余地を持つようにしたい」「女性なので、夜道で人に会うと警戒することがあるが、それが人種によってなのか、他の属性によってなのか、恐れがどこから来るのかを確認するようにしたい。」(有色人種は犯罪者という刷り込みがあるので。)などが出ていた。

それを全体でも10人の挙手を募り共有。「WSで仲間ができて勇気と繋がりで元気になれた。」「私は有色人種であるだけで、十分私として存在できている。」「たくさん刺激的な体験をできてこれを地元に持って帰って実践したい。」「私の黒い肌は美しいということ、それをしっかり確認できた。私たちは美しい。」などなど。ファシリからこのWSで多くの人が新たな学びをし、コミュニティでの実践の足掛かりを得られたはずなので、引き続き個々人でやっていってほしいと激励。また別のファシリからはセルフケアをして帰宅してほしいと、瞑想のWSやリラックスできる部屋の紹介などがあった。

 

 今まで思ってても言ってはいけない人種差別がトランプの出現であからさまな問題になっているけども、やっぱり差別者というレッテルを貼られることは不名誉極まりない北米社会で、自分の中に差別心や白人優位感情があることを人前で認めて話し合うことはものすごく大変なことなのかもしれないと想像する。そういう意味で、このWSは参加者たちに大きな負荷を与えると同時に、変化をもたらすのかもしれない。
白人が白人特権という名前をつけ、その現象を認識していることを考えると、日本の日本人特権についての認識の低さにため息がでるが、今日のワークは白人の罪悪感を増大させることなく具体的な取り組みに着地させることができていて、日本でWSするとしたらこういう手法が有効そうなのでとても参考になった。