LGBT Peer Mentoring Program Mentor Training Manual 2011-2012
(LGBT同輩支援事業 助言者訓練の手引き)
Sponsored by the LGBT Resource Center
UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA
LESBIAN GAY BISEXUAL TRANSGENDER (LGBT) RESOURCE CENTER
https://lgbtrc.usc.edu/files/2015/05/2011-2012-Training-Manual.pdf
※メンターを助言者、メンティを被支援者、ピアを同輩と訳している。
目次(取り急ぎ、太字の項目のみ訳しています。)
序章・・・3
プログラム概要・・・5
自我発達モデル・・・9
被支援者との関わり方・・・13
支援の仕方・・・14
助言者のガイドライン・・・15
カミングアウト:問題の基本的理解・・・17
カウンセリング技術・・・20
助言者の活動・・・30
追加資源・・・31
自己評価ワークシート・・・37
助言者パートナーシップ合意書・・・42
目標設定ワークシート・・・43
被支援者面接記録・・・45
LGBT同輩支援事業同意書・・・46
助言者のガイドライン(P15)
第一段階:関係性作り
・助言者に期待していることについて遠慮なく話すよう促す
・関係性作りのためのあなたの目標について話し合う
・邪魔や中断が入らないような、心地よい場所での面接を設定する
・導入のための緊張をほぐすための工夫や自己紹介ゲームなどは下記のサイトが参考になるhttp://wilderdom.com/games/Icebreakers.htmlhttp://www.residentassistant.com/games/icebreakers.htm
・LGBTQ用の導入ネタ
http://www.glsen.org/cgi-bin/iowa/all/news/record/333.html
第二段階:ニーズを見定める
・被支援者に関心事や求めていることについて話すよう促す
・被支援者がまだ気づいていなかったり、言語化できていないかもしれない要求がどういう類のものか見定めるよう努める
・繊細な分野について話す際、聞き取りの過程はたまに非難や追及のように受け取られることがあるので注意する
・項目に書き出してリストを作る・何が被支援者の動機か、何が能力発揮の妨げになっているか?
第三段階:目標設定
・第二段階で作ったリストを発展させて、目標設定のリストを作る
・目標を具体的で測定可能なものにすることで、被支援者のやる気を出させる
・資源を提供する
・被支援者をサポートすることを念頭に置きながら自分の似たような体験を共有する;しかしこうした個人的な話は押しつけ的なアドバイスと受け取られる可能性があるので注意すること。
第四段階:継続支援
・面接の度に進歩を振り返るように促す
・良かったこと、悪かったことを強調したり言い直したりする
・必要であれば目標を改定することを提案する
・被支援者が目標の達成に向けて進歩することでどんないいことがあるかを考えてみる
第五段階:終了
・最後の面接の数週間前に終了に向けて話し合いを始める
・お互いの関係性について、どのように締めくくりたいかを被支援者と共に話し合う
・設定てきた目標がこのプログラムの期間のみに制限されているわけではないこと、これまでで学んだやり方をどのように将来起こり得る問題や状況に応用できるかについて検討する・この支援関係や助言者の働きについて振り返ってもらい感想を求め、改善点がないか聞く
カミングアウト:問題の基本的理解(P17)
多くの同性愛嫌悪的な態度や実際の差別に直面しながら、LGBTQの肯定的なアイデンティティを形成することと、生涯に及ぶカミングアウトの過程は、多くのLGBTQにとって葛藤を伴い時間のかかる難しい問題だ。
●恐れているかもしれないことは?
・拒絶・嫌がらせ、虐待・家族や家から追い出されること
・精神療法を強要されること
・身体的暴力
●カムアウトしたい理由はどんなものがあり得るか?
・正直に生きたい、隠したり嘘をつくのをやめたい
・家族や友達と親密になりたい
・人前で、完全体の自分を感じたい
・隠し事をするのに要する労力と時間がもったいない
・隠さないことで、LGBTQの部分も含めて自分全体として統合されていると感じたい
・自分は大丈夫だと宣言したい
●カムアウトをどのように感じているだろうか?
・恐れ、攻撃を受けやすい
・解放
・誇りに思う
・不確か
・不安
●カムアウトされた側はどのように感じる可能性があるか?
・恐れ、不快
・どう言ったり何をすればいいのかわからない
・怒り
・欺かれた気持ち
・支援的
・嬉しく光栄に思う
●カムアウトした人に対して何を期待しているか?
・受容
・支援
・理解、気持ちを認める
・慰め
・より近い人間関係
・知ることで友情に悪影響がないこと
危機介入における一般的な情報
危機:通常の支援資源が弱かったり得られない状況での非日常的変化、苦悩、意思決定などへの適応期間において典型的に起こる、一時的に行動のコントロールを失った状態のこと。
●危機状況にいる人の行動の手がかり
・号泣
・急激な体重の増減
・睡眠、学習、食事の困難
・頻繁に独りでいる
・社交能力の欠如
・アルコールや薬物の乱用
・行動化:攻撃的な態度
・情緒不安定
・助言者に過度に頼る
・病気であることへの過度の不満
●危機介入の例
・関係性づくりのために連絡を取る
・問題や危機を明確にして定義づける
・代替案を探す
・他機関への委託
●その他
・助言者としてのあなたの直感と敏感さは最も価値があるので自分を信じること。
・危機が起こる前に、委託できる機関や資源に事前にあたっておく。
・被支援者のことが気がかりな時に、相談できるようにプロググラムのコーディネーターと支援センターの責任者を知っておく。
・被支援者についての懸念事項についてのその後を追跡する。
・守秘義務を守る。
・巻き込まれることは、危機を個人的に解決しなければならないという意味ではない。あなたの役割は、危機に役立つ支援資源の提供を容易にすることだ。
危機予防と介入
●LGBTQの若者と青年が経験する可能性があること
・疑問を持つこと、探求すること
・家族、友達、宗教などからの拒絶を恐れる
・メディアに溢れるステレオタイプへの囚われ
・内面化した同性愛嫌悪
・家族、友達、宗教などからの拒絶
・家庭、学校での暴力(高校や大学などでもあり得る)
・HIV/AIDSについての疑問
・家を追い出される、ホームレスになる
・薬物乱用
・低い自己肯定感
●関連事項
・社会的烙印
・孤立感、疎外感
・異性愛至上主義
・宗教上の烙印
・LGBTQの若者がカムアウトした年齢
(クリーシスとパターソンの記事)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9423411
必要ならば専門家に任せよう!
(危機予防、介入ホットラインは当マニュアルの末尾。)
カウンセリング技術(P20)
●非言語的コミュニケーションの例
1.アイコンタクト
2.身振り手振り(手で触れる、ハグ、手の動き)
3.声のトーン
4.身体的言語(座り方、腕を組む、前のめりの姿勢)
5.幸せだと言っていても、下を向いていたり、しかめっ面をしている
6.全体的な印象
7.電話の電源を切る
8.被支援者の正面に座る
9.被支援者の表情に注意する
10.適切な表情
11.少し前かがみの姿勢
12.開かれた姿勢
13.活力の程度
●言語的コミュニケーションの例
1.反応
2.限定的なの質問(はい、いいえで答える質問)、発展的な質問(その問を投げることで探りを入れていくような質問)
3.質問をたずねること、明確化を求めること
4.被支援者が言ったことを反芻することで、被支援者に聴いている態度を見せる
5.被支援者とのコミュニケーションの中であなたが一方的に受け手にならないように、あなたが彼らの声に耳を傾け、あなたの気持ちを彼らの感情に重ねるだけでなく、彼らが言わんとすることを理解した上で会話の内容が発展するように水を向ける発言を心がけることも大切である。例えば、被支援者が学校で孤立を感じると言った場合、近くの公園や川辺で午後を過ごしたらどうかとたずねよう。
6.しゃべり過ぎず、傾聴する
7.どんどん話してもらえるように気を配ること
(1)被支援者の話を途中で遮らない。
(2)自分の口調にも気を配って、相手から聞いたことを噛み砕いて「〜なんですね」と自分の言葉で返すような工夫も。
8.投影―被支援者が恐れや葛藤をあなたに登園することに注意する
(A)例えば、転移において、被支援者はあなたを彼らの生活上で重要な人物かのように扱い始める。転移は文字通り、誰かに対して抱いている気持ちをあなたに向けることを意味する。被支援者はあなたに承認を求めるかもしれないし、あなたにどう思われているかを気にするかもしれないし、あなたを教祖扱いするかもしれない。
(B)逆転移は、あなたが無意識に持っている気持ちを被支援者に向かって投影してしまうことだ。例えば、もし被支援者がもっと地域のコミュニティに関わりを持っていきたいけれど、緊張するのでゆっくりと入っていきたいと思っているとする。あなたは自分がコミュニティに関わりを持ち始めた時の経験から、自分にとっては思い切って飛び込むのが知り合いを作る一番の方法だったので、被支援者の言うことを聞く代わりに、一番いいのはとにかく被支援者がコミュニティに飛び込んで全部を一度に見てしまうことだと決めてつけて、自分の経験から得た気持ちを被支援者に一方的に投影してしまうようなことである。
守秘義務(P22)
同輩支援事業は、コミュニティで助言者を探している学生に支援と指針を提供する。一人一人の参加者のプライバシーを尊重するために最善が尽くされているが、守秘義務が守られない状況として下記の三つが挙げられる。
1、 被支援者が自身に危害を加えると脅す場合
2、 被支援者が誰かに危害を加えると脅す場合
3、被支援者が助言者に家庭内の子供またはお年寄りが虐待されていると知らせた場合
この三つの状況に置いて、助言者は守秘義務を破り、事態を適切に取り扱うための当局に連絡する施設の責任者や、同輩支援事業コーディネーターに報告することが求められる。
適当に組み合わせた関係性のため、助言者と被支援者との会話を誰かが小耳にはさむ可能性もある。支援関係を始める最初の時点で、守秘義務がどう扱われるべきかについて被支援者と率直に話し合うことが大事だ。
(例えば、被支援者は誰にもカムアウトしていないが、あなたは公にカムアウトしている。被支援者の友達グループが歩いてきて、その中のひとりがあなたに会うのは初めてだと言った場合、どのように自己紹介をするか?支援関係を始める前に、こうした状況について被支援者と話し合っておこう。)
施設の責任者や同胞支援事業のコーディネーターや他の助言者たちは毎月(電話、メール、直に会うなど)連絡を取り合って、現在の支援関係の状況について話し合いを行う。これは助言者と被支援者の間が明らかになる議論を含むだろう。
基本的な助言技術(P22)
・発展的な質問と限定的な質問
---限定的な質問:具体的な答えをたずねる質問
「いつそれをしましたか?」「週末に何をするのが好きですか?」など。
---発展的な質問:その問に対する答えを説明することで、その問への答えが深まっていくような質問。「どんな情報を探していますか?」「なぜそれが大切なのですか?」
もし被支援者が遠回しであっても何かをしたいと話していたら、明確化するようにしよう。例えば、被支援者が頻繁に浜辺について話していて、とても綺麗と聞いたと言っている。「では、いつか浜辺に行ってみたいですか?」とたずねてみよう。言い換えたり反芻することで、被支援者はあなたが話を聞いてくれていると感じることができる。これは信頼関係づくりと二人の意思疎通に役立つ。
被支援者に寄り添うために少し余分に歩み寄ることも大切だ。
第一段階:準備(P23)
これは支援の導入段階に当たる。たくさんの書類手続きの段階だ。メールや電話でいつどこで会いたいかなどを被支援者に連絡を取る。公の場に必要なもの全てを持参して、最初の面接で時間通りに行く。準備万端で被支援者を歓迎する。助言者になることについて自分自身の個人的動機は何かを確認し、この段階でそれを活用してみる。自分自身の個人的葛藤、価値、信条を把握していること。あなた自身の支援関係に期待することと、被支援者がこの関係に期待することを把握すること。
第二段階:交渉
1、 最初の面接で守秘義務について話し合う。
2、 非言語的コミュニケーションがこの段階では重要になる。被支援者の身体的言語、その人が言っていること、どのようにその人が行動しているかを観察する。アイコンタクトを取り、被支援者に向き合い、自分が傾聴して支援的であることを示す。
3、 境界線を設定し、役割と責任について被支援者と話し合う。
4、 被支援者と共に目標を設定する。目標ワークシートは手引きの最後にある。
第三段階:円滑化(P24)
1、良いカウンセラー/助言者の人格特徴については前述したが、下記も含む。
A.アイデンティティを確立している。自分自身のことを知っており、どこから来てどこに行くのかわかっている。
B.自分も他人も尊重する。
C.自身の力を認識することができ、引き受けることができる。力を悪用しない。
D.変化を厭わない。
E.自身の人生を形成する選択肢を作る。
F.ユーモアがあり、真摯で正直。
G.間違いを犯し、それを間違えと進んで認める。
H. 健康的な境界線を維持することができる。
2、できるカウンセラーは自分の限界も知っている。必要ならば専門家に任せることを忘れないようにしよう!
3、不快かもしれないが、沈黙は悪いことではない。あなたの質問に被支援者が黙って、答えを考えているようなら、急かさない様に。沈黙に慣れよう。
4、被支援者もこの過程に同様の責任がある。支援関係は双方向的で、両方に責任がある相互協力なものだ。
5、もし求められたら助言をしたらいいが、あなたは被支援者の変化のためのきっかけにすぎない。意思決定技術とは別であることを伝えよう。
6、先章で紹介した適切なカウンセリング技術を使おう。
7、あなたが直面する本当の倫理的な問題は、守秘義務と境界の設定だ。もし被支援者との間に何か起こった場合、そしてそれが自分の手に負えないと察知したなら、カウンセリング施設を紹介するか、コーディネーターを探して相談しよう。
8、この段階の間、あなたは責任を負い、被支援者の前進と成長を見守らなければならない。
第四段階:移行/分離(P25)
1、被支援者が支援関係から離れる準備ができたと感じた時、速く誠意のある形で起こるため、この段階はよく無視される。
2、被支援者の目を見張るような自尊心の向上が見られたり、目標をたくさん達成できた場合、分離と移行についての話し合いをはじめた方が良い。被支援者があなたが移行と分離を始める時にそれを予測できるので、この話し合いを早くからはじめることが大事だ。同輩助言支援事業の素晴らしい点は、実際の終了日がないことだ。被支援者とあなたが支援関係を続けようとする限り、ずっと続けることができる。
3、被支援者に、昼休憩に突然現れて、支援関係を終了する準備ができていて、今ここで最後にすると言ってくるようなことはしないように言おう。少なくとも最後に一回は、支援関係を終えるにあたり、設定してきた目標とこれまでのまとめについて話すための面接をしたいと伝えよう。この時点で、事業のコーディネーターを含めた三人で、これまで助言者が果たしてきた役割について話し合うことが望ましい。
4、この段階の間、被支援者は最初の段階へ後戻りしやすい。移行をすることが簡単かもしれないし、不安になったり、最初に会った時のように後退するかもしれない。支援関係における初期の気持ちや行動に後退する可能性に対して準備しておこう。