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LGBTQ洋書読書会とか

元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでしたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報を掲載しています。

WS「偏見縮小:選挙に勝つための戸別訪問の練習」

「偏見縮小:選挙に勝つための戸別訪問の練習」
Prejudice Reduction - Lessons from Deep Canvassing
1/21(土)3:00-4:30
【プログラムから概要】
地域の反差別条例が投票で変更される時、私たちは半分の時間を失います。多くの場合、これらは勝ち得るキャンペーンなのに、私たちは準備するのが遅すぎるのです。そのような結果にしてはいけません。抜け目のない選挙活動は私たちの投票数を上げるだけでなく、今後も長く続く道のりの上で、偏見を減らすことにもなります。この分科会では、洞察力のある戸別訪問のための視点と理想的な実践を教示します。そしてそれぞれの組織に合った統合的説得プログラムを検討します。
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この分科会は選挙活動をがんばっている日本の友達のために何か学んで伝えられたらいいなと思って参加した。最初たった4人しか参加者がいなかったけど、ぱらぱらと集まり最終的には12人ぐらいになっていた。人数が少ないためひとりずつ自己紹介を回された。LGBTQの政治運動系団体の人、大学の学生会執行部みたいなとこからの人、地域の選挙活動に参加している人、単に興味がある人などなど。ファシリが団体紹介とともに、ストーンウォール事件がゲイリブの発端と言われているけど、もっと前から警察との火種はあちこちであって、フロリダのマイアミがゲイリブの発祥の地なのよ本当は、という話をしていた。
この分科会では、トランスジェンダーのトイレ論争について実際に取り組んだことを例にあげて説明していた。近年、アメリカでは有名人がカムアウトしたり、トランスジェンダー芸能人が人気になったりで、トランスの存在がどんどん顕在化してきている。その反動でバックラッシュもあり、保守的な州ではトランスジェンダーが自認の性別のトイレを使うことを禁止する法律が通ったり、新たに作る動きもある。その法律が住民投票にかけられる時、どのように有権者に対して深いアプローチをすることができるか、有権者トランスジェンダーに対する偏見を減らし、差別を助長する法律に反対する票を投じさせるかが分科会のテーマだ。戸別訪問の手順は下記のような流れ。

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●導入と初見。
●段階1、ビデオを観る。新しい有権者の本当の感想。
●段階2、トランスを定義する。新しい有権者LGBTを経験する。
●段階3、新しい有権者のリアルな体験、判断。
●段階4、懸念に対処する。
●まとめ、最終評価。

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(上記研修用のプリントの訳を下記スライドに合わせて付け加えています。)
●導入と初見。
こんにちは、●●さん。(※)SAVEのボランティアで■■と申します。去年可決されたトランスジェンダーの人たちを含む反差別法の更新について、こちらの近所で有権者の方々にお話しさせてもらっています。この法律がなくなる可能性が出てきています。現在あなたが知っている範囲で判断するなら、トランスジェンダーも含んだ反差別法の是非について、反対賛成どちらに投票しますか?(反対・決めてない・賛成)0は完全に反対票、10は完全に賛成票としてスケールに〇をつけるとしたらどこですか?その理由も教えて下さい。

(※)欧米文化ではいちいち個人の名前を呼ぶことが重要。その人を認識していることになり、名前を呼ぶか呼ばないかで、相手の対応も変わってきます!

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段階1、ビデオを観る。新しい有権者の本当の感想。
●どういう人がトランスジェンダーなのかわかるようにビデオを見せる。
●それからトイレ議論をはじめる。
●判断を下さない口調で話す。
有権者がどういうスタンスなのか理解する。
●ビデオ
トランスジェンダーの人にこれまで会ったことがなかったら、どういう人なのか理解するのが難しいかもしれません。中にはこの法律に反対する人もいます。ここにこの問題について理解を深めるための短いビデオがあります。(有権者にビデオを見せる)
ビデオを見たうえで、今スケールに〇をつけるとしたらどこですか?反差別法について0は完全に反対票、10は完全に賛成票です。(もし上記と変わったら)その理由も教えて下さい。(全員に)あなたの考え賛否どちらについても教えて下さい。このビデオを見て何を考えましたか?

有権者に見せるビデオも分科会で流れた。ニュース番組の特集部分で、共和党議員の息子であるロドリゴという名のトランス男性(髭もあるしもうどっからもおっさん)のトランスの過程を紹介し、議員のお母さんがすごく支援的なメッセージをカメラに向かって言っている。すべては家族愛!みたいな。そしてトランスジェンダーのIDと違う性別のトイレ利用禁止の法律を作った政治家の画像が流れる。そしてパスしている(ホルモン注射などで外見が変わっており望みの性別として見られること)トランスジェンダーが、トイレの前で「IDの性別のトイレには入りたくない」と言っている画。(おじさんが女性トイレに入りたくないと言っている画。)(ここはパスという問題がトランス/NB界で勃発するところですがここでは一旦保留。)ポイントとしては(1)トランスジェンダーも家族を大事にする人間なのだ。特にここはラテン系コミュニティが強いフロリダ。”家族”重視の価値観に響く。(2)トランスジェンダーが使いたいトイレを使っても誰も何も困らない。法律は誰得?の単なる嫌がらせでしかない、という点だろう。
会場で流れたビデオとは違うけど、ロドリゴと議員のお母さんが出ているニュースがあったので参考までにどうぞ。

www.youtube.com

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段階2、トランスを定義する。新しい有権者LGBTを経験する。
●言語を明確にする。
有権者のリアルな経験と結びつける。
●自分の判断の元になった物語を共有する。
ビデオで見た通り、ロドリゴはトランス男性です。両親は生まれた時は女の子だと思っていましたが、ロドリゴは若い頃から自分を男だと認識していました。あなたにはトランスジェンダーの知り合いがいますか?(いいえ・はい)
----いいえ、トランスの知り合いはいません、の場合。
ロドリゴとお母さんについてどう思いますか?あなたの感じたことを教えて下さい。ロドリゴは男性だと思いますか?
■ゲイやレズビアンの知り合いはいますか?どうやって知り合いましたか?彼らがゲイやレズビアンであることをどうやって知りましか?どう思いましたか?どのように彼らは扱われていましたか?
----はい、トランスの知り合いがいます、の場合。
■どうやって知り合いましたか?名前は?何をしている人ですか?その人たちがトランスジェンダーだとわかったことはあなたにとってどういうことでしたか?どう感じましたか?どのように自分の感覚が変わりましたか?
***自分の判断の元になった物語を共有する***
私はトランスジェンダーではありませんが、他人から一方的に判断されたように感じた経験があります。それは私が、、、の時に、、、(人種、経済的階級、言語の違いなどで、自分が弱い存在であり得ることについての話をする。

実際に戸別訪問どういうやり取りがされたかというビデオも見せてくれた。玄関口で犬をかかえた主婦らしき女性に戸別訪問ボランティアが話を切り出している。自分の子供が14歳だけと18歳ぐらいに見えて、見た目だけで判断されて嫌な思いをしているなど。トランスの話しと実際の体験との共通性を見出して、そこを掘り下げて行く。ここではまだ、トランス問題については中立なトーンを保ち、有権者の話すことについても判断的でない態度で、ただ聞き手としての良い雰囲気話しやすさの構築を優先。この辺り、ポリティカル・コレクトネスよりもエモーショナル・コレクトネスが重要の話しに似ている。(Ted Talk

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段階3、新しい有権者のリアルな体験、判断。
●質問する。
有権者のリアルな体験に焦点を当てる。
●深く突っ込む。
●個人的なものにする。
この法律は重要です。なぜなら、私たちが見た目から判断することと、本人の認識にギャップがある人たち(今回の場合はトランスジェンダー)をどのように扱いたいかについて考える機会を与えるからです。どう思いますか?現実としては一方的判断は起こります。それは誰かを傷つけるし、誰にでも起き得ることです。あなたが一方的な判断をされたと感じたり、本来の自分とは違った風に扱われた体験について教えてくれますか。もしそうした体験がなければ、誰かそうした体験をしているのを見たことがありますか。いつ?それを見てどう思いましたか?
※対話を深めるキーワード・もっと教えて下さい。それから何が起こったのですか?どのように感じましたか?どうして?
***トランスの人と有権者の体験を重ね、共感を持てるように物語を共有する***
私たちの多くが他人を一方的に判断したくないにもかかわらず、私たちは有権者としてトランスの人に影響を及ぼす投票の力を持っている。
※対話を深めるキーワード・私の友達の●●は、、、、私が今日ここに来ている理由は、、、、私の話についてどう思いますか?

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段階4、懸念に対処する。
●懸念を明確にする。
●物語を共有する。
●事実を上げる。
●主張を述べる。
先ほどあなたは●●という懸念があると言いましたが、今はどう考えますか?実際にどんなことが起こると想像しますか?多くの人がトランスジェンダーの知り合いがいないので、現実とはかけ離れた疑問や懸念を多く持っているのだと思います。私の友達の●●にとって、、、(トイレを使う時に、自分の大切なトランスの友達が直面しているリアルな物語を共有する。あるいは、トイレを使う時の自分のリアルな体験を共有する。)
ビデオを振り返って考えてみて、どのトイレをロドリゴは使うべきでしょうか?それはなぜですか?
■現実は、トランスジェンダーの全員がロドリゴのような見た目ではありません。トランスジェンダーの中には、自身の身の安全に不安を感じるので、公共のトイレを使うのが怖いという人たちもいます。
■トランスの人も含めて私たち全員が、トイレのプライバシーと安全性について全員のために配慮する必要があります。
■これらのための安全策は、公共安全に関する事件を増加させることなく、17の州・ブロワード群で成功裏に実行されてきています。

●主張を述べる!

私はこのようなトランスの人も含めた法律はどこでも法律化される必要があると思います、なぜなら、、


参加者から「ビデオの中で、反対派がトランスジェンダーが別のトイレを使うのを許したら、性犯罪が増えると言っていたのが女性として気になった。子どもたちの安全を考えてしまう人がいるのはわかる。」ファシリからは、トランスジェンダー性自認と一致したトイレを使うことと、性犯罪の話しは別問題と説明。トランスジェンダーは性犯罪ではないし、性犯罪が増えたというデータもない。
ちょっとズレますが、今翻訳作業している絵本(Transphobia-Deal with it and be a gender transcender)の中の一節をご紹介。
★トランスについての神話
「みんなにとって男女別トイレの方が、ジェンダーフリートイレよりも安全だ」
回答:誰かを脅かしたり、攻撃したり、危険に曝したり、見張ったりする人がいなければ、トイレは安全です。人々がトイレでどのように行動するかが問題なのであって、それは男女別であろうが、ジェンダーフリーであろうが関係ありません!

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まとめ、最終評価。
●どう投票するか聞く。
●なぜ心が動かされたか聞く。(変わった場合)
今まで話をしてきたわけですが、反差別法に反対票を入れますか?それとも賛成票を入れますか?(反対・決めてない・賛成)最後に、0から10のスケールで、0は完全に反対、10は完全に賛成とするとどこに〇をつけますか?(もし以前と変わっていたら)その理由も教えて下さい。何があなたの考えを変えたのか教えて下さい。
都合の良い電話番号_________
戸別訪問ボランティア名_______
有権者名______________

ところで、投票率の低い日本のことを考えると、そもそも投票しないような人の家をたずねてしまい、時間と労力の無駄みたいなことにならないのかしら。しかし、この戸別訪問は手あたり次第テキトーな家に行っているわけではなく、公になっている投票行動の記録を元に下調べをした上で行っているとのこと。(ていうか投票行動って公になってるの?知らなかった!)ある程度どういう地域なのかわかっていると心の準備もしやすいね。

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戸別訪問ボランティアに結果を報告してもらう
●自分にとってどんな感じだったか?
●どこで深く突っ込めたか?
●普段よりも詳細を共有したか?

一通り説明が終わり、さあ!ペアになってトレーニングしましょう!とプリントを見ながら実際に戸別訪問ボランティア役と有権者役になりロールプレイング。段階1,2は飛ばして、3からスタート。このたびは隣のかわいい若い男子とすんなりとペアになれた(!!)最初は若男子が戸別訪問ボランティア、私が有権者。「えー、反差別法からトランスジェンダーの人たちを排除しよういう動きがあるのですが、あなたは見た目で判断されて嫌な目に合ったことがありますか?」「アジア人なので、お店で店員がついてきて見張はられたりとか、逆に何か頼んだり質問しても無視されたりとか、嫌な思いをすることがあります。見た目で判断されることの不快さはトランスの人と同じかもしれないです。」とまるで自分はトランスじゃない風に回答してみた。交代してトランスの問題と共通するような体験について聞いてみると、若男子は大学生で見た目はほとんど白人なんだけど、中東のバックグラウンドでイスラム教徒。そのことを知らない白人がイスラム教のことを悪く言ったりする場面でよく気まずい思いをするとのこと。なるほどね。その体験とトランスの人との体験を重ね合わせて共感に持っていく作業をしようとしたけど、時間切れ。

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他にもこうした戸別訪問ボランティア育成のワークショップをしている団体がけっこうあるようです。こうしたひとりひとりにアタックして変えて行くという地道な作業を怠り勝ちだけど、けっきょくはそうした活動が確実な変化をもたらすのかも。急がば回れかしら。
このトランスのトイレ論争への戸別訪問ボランティア投入でどの程度の効果があったのかという結果は、あんまり聞き取れませんでしたが、確かな効果はあったらしい。数字的なことはあまり書かれてないけど、下記のように新聞記事になってます。この共感的対話術を10-15分することで得られたトランスジェンダーの人への偏見減少は、ゲイ・レズビアンへの偏見を減らす10年間の取り組みと同じぐらいの効果があったとか!従来のTV宣伝、電話などの選挙活動よりもインパクトが長続きすることも明らかになっているらしい。
UC Berkeley, Stanford study finds canvassing conversations reduce transgender prejudice | Berkeley News

わかりやすい日本語の記事ありましたわ。こちらのサイトに実際に戸別訪問してる動画が紹介されてました。
■トランスジェンダーへの偏見を大幅に減らす科学的な方法!「ディープ・キャンバシング」とは?

youtu.be

戸別訪問ボランティアは何日もかけて研修を受けるのかと思いきや、午前中に1時間半の研修を受けて、午後に出陣!というけっこう即席な取り組み。それでやっちゃえるのが欧米文化な気がする。前も書いたけど、こっちでワークショップしたら誰でもファシリできるぐらいのスキルがある。朝とかお昼にやってるワイドショーとかってだいたい議論してる。議論慣れしてて生活の一部。批判的思考(クリティカルシンキング)と率先力(リーダーシップスキル)と議論力(ディスカッションスキル)が習得できるように学校のカリキュラムがなってるみたい。日本で戸別訪問ボランティア突撃させても「受動的傾聴」だけやって何も変えられないか、「意見がはっきりしている人」といううざい人認識されて終わりということになりはしないか。。。議論をすること自体が嫌煙される土壌でどうやって人々を政治参加させていけるのか。
ファシリが「難しいのはマイノリティ体験を共有できないような人たち、中流上級の白人で中年以上の男性などを相手にする場合。それでも何かしらどこかで共通項を見いだせるはず。」と言っていた。日本で言うと、中年以上の日本人男性。手強い層が厚すぎる日本。。。(誰も覚えてないと思うけど、ここ元々はリバティ大阪を応援する!というブログだったんですが、当時リバティ存続のために、維新の会の議員にロビイングしてこうした対話を試みた時期があったのを思い出しました。。。個々の議員についての詳細は遡れば読めます。)

このワークショップで学んだことは、いったん深いところで理解を得られたら、今後もその人の判断の基準に食い込んでいけるという可能性。それがまさに分科会のタイトルになっている「偏見縮小」ってことだよね。このシンプルなタイトルでドキュンと的を得てる、美しい!有権者個人個人がトランスやその他のマイノリティについての偏見を縮小させていくためには、ひとりではできないので、誰かの介入が必要で、その丁寧な体験を拾い上げ掘り下げ普遍的な共感につなげていく作業は、こうして手順に書き上げてみるとシステマティックに見えるけど、なんかやり取りと手ごたえを考えると感動的じゃないか!とも思いました。「即席出前ピアサポートグループ1対1バージョン15分セッション」みたいな。
なんか可能性と希望を感じられるね!


■主催者団体 Save LGBT