LGBTQ洋書読書会とか

元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでしたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報を掲載しています。

WS報告「セックス、クイア、健康の平等:コミュニティの行動計画作り」

「セックス、クイア、健康の平等:コミュニティの行動計画作り」
1/20(金)4:45-6:15

【プログラムから概要】

私たちのコミュニティは健康の平等を享受するに値します。しかし、全米のLGBTQコミュニティにおいて、クィアの人たちは深刻な健康問題を経験しています。そのほとんどは早期発見によって予防可能、治療可能なものです。この相互作用的な分科会では、LGBTの健康平等のために、健康増進プロジェクトやセックスポジティブ啓発キャンペーンの成功例を共有する予定です。また各コミュニティでLGBT健康平等を達成するための行動計画を作ったり、コラボレーションと資金調達の機会についても議論します。
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 発表者のAdrian Shankerさんは、警察トレーニングの分科会のリズさんと同じ、ブラッドベリー・サリバンLGBTコミュニティセンターの人で、代表者。教授でもあるらしく、ワシントンのコロンビアン大学で「LGBTの健康」という1年のコースで教えているらしい。(認定証が出るプログラムらしい。)そんなLGBTの健康に特化した学問分野ができていて、コース終了認定書もでるなんて、さすがアメリカ!関係ないけど、エイドリアンさん、小さな帽子(キッパ)をかぶってらして、ユダヤ人の方だとわかる。順を追ってLGBTの健康を促進するための行動計画つくりのためのステップが説明された。

1、健康平等の枠組みとは
LGBTQの健康というと、だいたいいつもHIV精神疾患という話になるが、癌や喫煙なども同じように深刻な問題だ。また、ひとつの問題だけではなく、だいたい複数の問題が重複している。HIV+精神病+薬物などなど。これらを扱う場合の機能的な問題、病院、クリニックが使いやすいかどうか、というのも重要な要素だ。同性愛/トランス嫌悪的な対応がLGBT患者を医療システムから排除する。トロントではよく癌検診に行こうというキャンペーンを見かける。レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーそれぞれに特化して呼びかけるポスターやフライヤーがある。検診を受けにくいバリアがLGBTQの人たちにはあるからだろう。

 2、LGBTの健康を測定する

LGBTの総合的健康についての調査が行われているそうで、調査結果がウェブにあがっているのを紹介してくれた。コミュニティのニーズを正確にとらえるためには調査は不可欠だ。例えば、たばこの喫煙率について、一般平均と比べるとLGBTQは明らかに高い。トランスだけ見ると平均の倍にもおよぶ。こうした調査をさらに進めて行くために保健庁などとの連携を作ろうとしているそうだ。

LGBT HealthLink

www.lgbthealthlink.org


■LGBTの喫煙率についての報告書(PDF)

3、ケアの妨げになっているものは何か?

LGBTに特化した医療機関がないこと、カムアウトしているLGBTの医者、医療従事者が少ないため、医療を利用するのが敷居が高い。保険料のカットも深刻な問題らしい。下記のビデオではトランスがいかに医療から疎外されていて、医者にかかりにくいかを伝えている。待合室、初診受付の問診票、面接などの場面で、LGBTフレンドリーであることを示し、患者の不安感を減らすことが可能だ。紹介された下記のビデオがとてもわかりやすい!古い映画風の作りもおしゃれ。単に咳が出て医者に来たのに、トランスの人は診たことないから他へ行けと言われるところが印象的。
「Vanessa goes to the Doctor」

www.youtube.com


LGBT患者層にとってのケアに対する障害(下のスライドの訳)
●性別表記など、異性愛前提の限られたインテークフォーム
●医療従事者との否定的な過去の体験
LGBT文化への理解の欠如
LGBTの健康問題への医療的適用性の欠如
●リスクの高い行動についてのLGBTコミュニティ内での知識の欠如
●医療従事者のセックスを恥とする感覚、一方的な決めつけ
LGBTの医療的ニーズをカバーしない医療
LGBTの医療従事者を見つけにくい、少ない
●医療従事者にカムアウトしないことにしている
●医療従事者が失礼な質問をする
●比較的LGBTの健康増進のための資金配分が少ない
●乳がんは女性のみなど、性別に基づいたキャンペーン

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4、セックスポジティブで、クィアフレンドリーな実践
先にトランスの喫煙率が高いという話が出たが、調査の結果、はじめての喫煙がゲイバーであることが多く、一般の喫煙者との行動差が見られる。タバコ会社はLGBTは良い客だとわかっていて、ゲイバーにすごく安くタバコを卸すんだそうだ。一部のLGBTQにとって憩いの場であり、解放される時間でもあるバーやクラブは、生活一部でありそこでの喫煙は用意に慣習化しやすい。それに加えて社会的なストレスが喫煙の常習化、依存へと進展する。効果のあるキャンペーンをするためには、そうしたLGBT特有の行動による健康問題の背景を知っておく必要があるとのこと。下記は禁煙キャンペーンのためにかなりお金をかけて作ったビデオ。お金は政府などの助成金らしい。
「Be Known for Your Flawless」

www.youtube.com


制作者は、ゲイバーなど客層に影響が出るように、Youtubeのトランスセレブたちを起用して派手なものにしたらしいが、賛否両論だった。「トランスをバカにしてるのでは」とか「あまりに商業的」などの参加者からの声。

「This is Free」こちらがYoutubeチャンネルで、その他の素敵なキャンペーン動画がたくさん見れます。

www.youtube.com


こちらは地方自治体からの助成金で作った精神衛生向上のためのビデオ。

「Don't let shame decide」

www.youtube.com


どこからお金を取ってくるかでやっぱりキャンペーンの雰囲気も変わってくるらしい。あまり派手なことができないお堅い機関経由だとこうしたまじめな感じになる。エイドリアンさんはこのビデオは良くできていると言ってたけど。うーん、そうなのか。よくわからん。

タイとアメリカで、ゲイコミュニティへ啓発のポスターの比較もしていた。PrEPを飲んでHIV検査をしよう啓発するタイ政府のポスターは、裸体男子が絡まりあって、思う存分ヤろうみたいな雰囲気。ずいぶん思い切ったやり方をするもんだねタイ政府。アメリカのものは、一方的な判断を下されるような医者には行かず、コミュニティで紹介されている安全なLGBTQフレンドリーな医療機関に行こうという啓発。医療福祉を平等にするには、医療から疎外されていないと感じてもらうことが第一歩と考えているようだ。病院の中をフレンドリーにすることはもちろんだがそうした待ちの姿勢だけでなく、こうして外へ呼びかける先手を打つような積極性も必要だと思った。

 5、行動計画作り

1、身の周りのニーズを掘り出す
2、主要なグループを呼び集める
3、試験的なキャンペーンを共同的に作る
4、限られた範囲でキャンペーンを試験的に実施
5、資金集めの実演として試験版を使う
6、大きな規模のキャンペーンを立ち上げる

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例としては、ゲイ・バイセクシュアル男性のPapTest(直腸がんのテスト)のキャンペーンの取り組みがあげられた。直腸がんに対する意識は低く、ほとんどの人が検査を受けたことがない。そこで、医療関係者にPapTestについての研修を行い、キャンペーンのイベントをするためにLGBTコミュニティ、保険会社、教会、ゲイバーなどを巻き込んだそうだ。ゲイバーなどでPapTestについての広報をするのは有効。バーのトイレなどに掲示物を貼るのは意外と効果があるらしい。結果は300人規模のイベントで10人テストを受けたとのこと。ちょっと英語がわからなかったけど、これが成功例だったのか不明です。少なくないか10人て。

質疑応答ではFtMへのサービスを充実させたい、具体的にはもっと情報が届くようにして医療へのアクセスを容易にしたいという人がいて、エイドリアンさんが実際の行動計画を立てる道順をいっしょに考える対話をしていた。医療へのアクセスって漠然としているのでもっと絞った方がいいとか、ニーズをしっかり聞き取って、胸オペについてなのか、ホルモンについてなのかなど、カテゴリーを分けて取り組む方がよいとか、どんな媒体を使って情報発信するかなどについて話し合っていたと思う。すいませんが詳細は忘れました。

基本的にはLGBTQ業界に関わらず、医療や福祉サービスまたは企業が顧客にリーチする時に立てる行動計画と同じ方法だと思うけど、LGBTQならではの部分にしっかり気を配るということだろう。そのためにはLGBTQ特有の行動様式や文化、社会構造の中での位置づけ、それにどんなリスクにさらされているかなどを調査し理解しておく必要がある。ここで気づいたことは、私は今まで日本でやってきた活動やイベントで、Stakeholder(利害関係者)の枠を狭く設定してきたかもしれないということだ。イベントの定義の仕方次第で、もっといろんなところを巻き込むことができ、それによって付加価値がついたり、新しい人をつなげたりする可能性が増える。ここにも、自分たちのことは自分たちだけでどうにかしないといけない、関係ない人を巻き込んではいけない、といった日本的倫理観が働いているように思う。

 

■主催者団体 Bradbury-Sullivan LGBT Community Center

www.bradburysullivancenter.org


■LGBT Health Graduate Certificate Program