LGBTQ洋書読書会とか

新設Cチーム企画主催者が、元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでやってましたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報をごった煮状態で掲載していますv

WS報告「LGBTの人種差別反対運動を作ろう」

LGBTの人種差別反対運動を作ろう」

このワークショップは水曜日朝9時から夕方5時半まで1日中かけてやっていた。最初は一番大きな会場で800人ぐらい、次は4つのグループに分かれて、その次は10つのグループに分かれ、最後にまた大会場に戻って来てまとめをする、というもの。構成がうまくできていて感心した。

 

セッション1(人種差別)9:00-10:30

最初の大会場では、大会最初のプログラムでもあり、期待して参加している人も多いようで、士気を高めるため盛り上げる感じの呼びかけが多く、参加者もイエーイとかヤーみたいに盛り上がっている。アメリカっぽい。トランプ政権になってしまい、人種差別が加速しそうな状況を食い止めなければならない。そのためには今ここで効果的な対策をしていくこと、それを参加者が各地域に持って帰って実践することが必要。本当に変えることができる実践的なワークをするためには、あなた自身が変化を求めなければならない、みたいなことを言っていたと思う。複数のファシリテーターが代わる代わる、要点を話し参加者の気持ちを高め、効いている方も飽きない。

やったことは、知らない人を捕まえて一対一でいくつかのテーマについて話し合う。「この大会、ワークに何を期待しているか?」「どんな人種差別に出会ったことがあるか?」「人種差別について話す時、どういう気持ちになるか?」「何が対話を妨げていると思うか?」など、一対一の対話を3~4人ぐらいと3~5分ずつさせて、目的と取り組むべき弊害を明確にする作業を行った。
800人もいるのに、こういうペアを組むワークでまず周囲の人を捕まえられず、ひとりぼっちになるタイプです!うろうろしてどうにかペアを見つけても、たどたどしい自信のない英語で声が小さくなりがち、さらにガヤガヤうるさい会場で相手の声が聞き取りにくいという苦手な状況。だが、どうにかやり遂げたよ。。。

ところで、ここでの自己紹介の定番としては、名前、使いたい第三人称を合わせて言う。私の場合であれば、「ショーです。He,Him,Hisが第三人称です。」もし男女どちらでもない第三人称を使ってもらいたい場合は、色々あるけど、Theyが主流。この人種差別対抗ワークショップでは、エスニシティについても付け加えるように言われることもあり、私の場合なら「日本出身で、アジア人と自認しています。」と上記の名前などの後に続けた。
また、ここはアメリカ。ファシリが「どなたか感想は?」と言うとバンバンあちこちで手があがり、ガンガン即座に思ってることを言ってます。ファシリはやりやすいね。だいたいどんなワークでも最後に共有する時間を取っていて、質問、感想など発言が活発でした。

LGBTQのコミュニティセンターで働いている人、大学のLGBTQのサポートセンターで働いている人、ラテン系のトランス女性のサポートグループの代表の人、保健機関のHIV啓発の部署のラテン系の人などと話をした。仕事で学会に来ている人がたくさんいるのだ。LGBTのことが仕事になっているアメリカ。専門分野として成り立っているということ。やり取りの中でラテン系の人が、やっぱり有色人種同士であっても人種差別の話しは日常的には話にくい雰囲気がある、と言ってたのは意外だった。ラテン系の文化でももっとラテン系ぽくならないとというプレッシャーやもっと白人ぽくならないとという理想に葛藤があるなど白人文化との衝突がうかがえた。私が言ったことは、「日本では深刻な人種差別が広がっており、マジョリティをどう教育するのかを知りたい。」みたいな。

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セッション2(人種差別)10:45-12:30

次では、4つのグループに分かれた。200人ぐらいの規模。有色人種の初参加、有色人種の二回目以降、白人の初参加、白人の二回目以降。私は有色人種の初参加のグループに行ったが、白人グループがどんなことをするのかすごく気になった。ところで、正直、私は誰が白人なのかわからない。正直、誰が黒人なのかもわからない。黒人だと思っていた同級生がインド人だったり、ラテン系だったりしたし、完全に白人だと思っていた友達が先住民の母と白人の父を持っており、先住民アイデンティティを持っていた。どうやって「白人」が誰だか決めるのか、定義はなんなのか?見た目は白人パス(パスとはそのように見えるという意味)してても実際は有色人種の二世だったり、養子に出されていて親は有色人種とか、一言で白人と言っても多様。結局、どうやら自称らしい。

有色人種の初参加のグループでも、私から見たら白人の人たちがいた。しかしよく聞くとラテン系と白人の親や、中国人と白人の親を持つ人だったりした。ワークショップでは、最初にウォーミングアップとして知らない人とペアになり、これまでのワークの感想を言い合った。それから、ファシリテーターが自分の体験談を例としてシェアし、5人ずつの小グループに別れて体験をシェアしあった。人種差別が個々人の中でどのように作られ構築されていくかについての図式が配布されて、それに従って自分の体験を振り返り、シェアしあった。

例であげられたファシリの話しが面白かった。一人は、ラテン系の親とイタリア系の親を持つ人で、ラテン系の親戚の所にいくと「お前は白すぎるからもっと日焼けしなさい」と海に行くことをすすめられ、イタリア系の親戚の所に行くと「お前は黒すぎるから日焼けしないように家にいなさい」と言われる。自分を大事にしてくれる祖父母がそれぞれ違うことを言ってくるので小さい頃は混乱したらしい。二人目は、アメリカ生まれのインド人で、インド系の中でも肌が黒い方だったので、小さい頃から黒人と思われることが多く、インド人だと言うと疑われたりした。親はインド育ちで移民してきているので、こうした人種の葛藤を話しても伝わらない。三人目は、父親が白人、母親が有色人種で移民してきた人で、両親が離婚。スーパーでの買い物をする時など、母親は有色人種であるために周囲から冷たい扱いを受ける一方で、父親と買い物をするとみんな優しくしてくれた。話しは聞いていて知っていたが、こうして目の当たりにすることで、小さい頃からこうした人種差別を体験してきている人たちが多くいることが、新鮮だった。

グループ内の話しで印象的だったのは、黒人の若い女性の話しで、その人は親がわりと良い仕事で周囲の黒人の人たちより経済的に裕福だったこともあり、高校になるまで差別に気が付かずに生きてきたという。しかし思い返せば、いわゆる黒人のステレオタイプにはまらないよう、白人文化の人間になるように意識して振る舞っていたと気付き、高校で白人の多い学校に行って差別を目の当たりにし、白人に媚びを売ることをやめ、黒人であることにしっくりくるようになったと言っていた。

私は自分がカナダに来るまで白人のような気分でいたということを説明した。日本で日本人でいるということ、ホワイトウォッシュされた文化(白人至上主義)で育ち、自分がアジア人であることを自覚する機会がなかった。「アジアの人」と言う時、日本人の自分は入っていなかった。カナダに来て初めて、自分がアジア人だと気付き、アジア人として差別されること(商店とかでアジア人だから何か盗むんじゃないかとジロジロ監視されるとか)で白人至上主義に気が付いた。在日の友達もいて問題は見えていたのにもかかわらず、人種差別は日本にはそんなにはないと思っていたのは自分が日本人だとわかっていなかったからだ。私の親は事件や事故など不幸にとても敏感で、何かと注意したり、用心するように言われて育った。子を心配する想いで「●●には注意しなさい」と言っているとしても、それが外国人差別に聞こえることが多かったように思う。そうした家族や環境からのステレオタイプの「強化」につても配られた図式に沿ってシェアしあった。

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チャートは写真の通りで、ざっくりとした訳。

【出生】(既に差別構造ができあがっている社会)
【最初の社会化】(期待、歴史、伝統、ステレオタイプ、神話、情報の欠如、偏った歴史、習慣、価値、夢、役割、責任)
【制度、文化】(家族、友達、学校、先生、本、宗教組織、メディア、政府、法制度、文化的標準)
【内面化、強化】(制裁、スティグマ、否定的な意味での’違い’、行動についての報酬と罰、意識的/無意識的な考えと行動)
【結果】(不一致、沈黙、罪悪感、怒り、自己嫌悪、非人道的、リアリティの欠如、共謀、無知、内面化した抑圧/支配、仲間内への暴力/対立)
【行動】(波風を立てない、現状維持、変化は悪)
【中核】(混乱、痛み、怒り、恐れ)

 

グループで話し合ったことをシェアする全体の時間では、FtMの子どもを自殺で亡くした母が参加していて、息子が亡くなったことがきっかけでこうした活動に参加するようになった、できることをしていきたいと涙ながらに語っていた。LGBTの親の会からも多くの参加があったようだ。
ワークショップの最後には、最初のペアの人と向かい合い、ファシリが言う通りの言葉をそのまま繰り返して言った。「あなたは美しい。あなたはそのままで完璧。あなたは素晴らしい。」みたいな感じだったと思う。

 

セッション3(人種差別)2:00-4:45

参加者は自分の関心にしたがい、テーマ分けされた10の分科会に分かれて引き続きワークショップ。50人ぐらいまで減った。私は白人もいる中でどうやって対話を作っていくかが知りたかったので、ミックスでぶっちゃけ話そうみたいな分科会を選んだ。
最初にファシリが、人種を考える時、女性であること、ジェンダーの問題を切り離すことはできないと指摘した。白人が有色人種が体験している日常的な抑圧に気付けないように、男性も女性の話を聞いても何のことを言っているのか理解できない。その点をどうやって意識的になり、話を聞いていけるかが肝心、といってたと思う。また、人によっては単一人種の中で育ってきたため、これまで差別を体験したことがない人もいるはず。有色人種であっても、いろんな背景があることを知っておこう、とも言ってたと思う。

ワークに入る前に、コミュニティのガイドラインを学ぶ。

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適当な訳。
1、開かれた正直な対話。
2、十分に参加する。
3、個人的な体験を元に語る。
4、敬意のある傾聴。理解するよう努める。もし同意できない場合はさらによく聴く。
5、限られた発言時間を共有する。他者の共有を促す。
6、十分にその場に存在する。
7、新しいまたは違う意見に対して聞く耳を持つ。
8、良い意図として受け取る。意図しない衝撃を探検する。
9、危険を冒す。「不快」にチャレンジしてみる。勇気をもって関わる。
10、プライバシーを尊重して秘密を守る。
11、グループ内そして自分の中で何が起こっているかに気づきそれを言い表す。
12、自分のトリガー(気持ちをざわつかせるきっかけ)を認識する。トリガーに当たってしまったら、それを共有する。
13、対話は私たちを理解と受容の深いレベルに導くことを信じる。
14、この機会を利用し、育み、楽しむ。


ワークでやったことはやはりペアになり、これまでの感想を述べあい、このワークに期待していることを話した。その後、5人ぐらいのグループに分かれて、それぞれの人種差別体験を語り合う。が、なぜか白人4人に私一人という組み合わせになってしまい、しゃべれらないといけないプレッシャーを感じる!というのも、ファシリが白人自認の人は対話中は一歩下がるようにと指示を出しているからだ。頑張ってしゃべったため、白人の人らが何をしゃべってたか覚えてない!残念。
ていうか、ここに来てる白人の人たちはホント、いい人よね。わざわざ反省しに来るんだもんね。こうしたアライが、本当に人種差別を理解して、白人特権を白人を変えるために使っていくように仕向けるのがワークショップの醍醐味だと思われます。

写真は、人種差別を語る時、自分は誰で、どのような文脈で何を話すかを定義する必要があるという図。

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違う人種の人と対話している最中に、あなたはどんな障壁に気づいたり出くわしたりしましたか?

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対話の障害になっているものは何か、ブレーンストーミングで出た意見をざっくり訳。ちょっと文脈がわからなくて意味わからないのもあるけども。

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●共感の欠如
●競争心
●自分と他者について知る努力の欠如
●認知的、精神的健康
●文化的言語
●ある空間にどんな態度で存在し、その空間をどう他者と共有するか。

●交差する場で人種がどんな作用をするか(移民の際など)
●恐れ(間違うこと、誤解、人からどう見られているか、存在を認められていないかも)
●エゴ
セクシュアリティの妨げ
●人種という複雑な関係性の蓋を開けてしまうこと
●喧嘩の種
●痛み
●物理的空間
●いつ黙るべきかをわきまえる(わきまえられない)
●お互いの「つもり」を共有できない
●自分のことを言っていると思って被害妄想になる
●衝突やつらい状況の中で安らぎを見出すこと


その後、椅子をのけて広間を作り、一人一枚トランプのカードが配られた。11~13の絵のカードとエースがハイクラス。7~10がミドルクラス、6~2から最下層。数字に寄って人を判断するように言われた。上流階級の人にはニコニコと対応して、「お昼一緒にどう?」などと言ったり、最下層には話しかけられても無視したり、ということだ。自分のカードは見てはいけないので、自分がどのクラスかはわかならい。カードを前に持って、うろうろと社交する。話しかけても苦笑いで去る人が多い。一瞥して視線をそらしどこかへ行く人。目を合わせないように、私の存在が見えてないかのように通り過ぎる人。これはどう考えても私のカードは6以下だ。(実際は2でした。)
何が辛かったかというと、この価値がないと見なされる体験ではなく、この体験がカナダで日常的に感じていることとあまりに同じだったことだ。「これは、いつもと同じだ!」という発見が、アジア人で、英語が上手く話せない若い男子の社会的価値を裏付けるように思えて、辛かった。

3分間の社交タイムの後、ファシリは全員にその場でカードを上にかかげるように言った。そうするとある傾向があることにみんなが気づいた。上流は上流で塊っていたのだ。その他の階級も混ざっているけれど、同じような場所にいる傾向が見られた。これが、現実社会でも起こっていることなのだ。ファシリが参加者にどう思ったか聞くと、どんどん手があがり感想を述べていく。西洋人って感じ。「(上流)みんなが感じ良くしてくれるのですっごく気持ちよかった。」「上流者に感じよくされると感じよく返すので上流同士で塊になりやすいんだと思う。」「(下流)下流同士なのに仲良くしようと思えなかった。同じにされたくないと思って。」「(ファシリ)マイノリティ同士がいがみ合ったり戦ったりするのはそういう心理でしょうね。」「(中流)上流階級の人に気に入られようと頑張ったが難しかった。」「(ファシリ)自分の文化を捨てて、上流文化に馴染もうとすることになっていきそうですね。」いろんななるほどと思わされる感想がたくさん出た。

その後、2重の輪になり、内側と外側で向き合いペアを作った。一方は差別体験語り、他方は黙って聞く。時間は1分間、もし早く済んでも黙って沈黙を過ごし、同意や返答するような対話はしない。話す内容はファシリの指示で少しずつ変わり、5回程度やった。このワークの意図が詳しく聞き取れなかったんだけど、白人としてこれをどう受け止めて持って帰るか、ということだろうと思う。このワークで思い出したのは、セッション2の最後でファシリが言っていた例。人種差別の体験談をした後で、白人の人がハグを求めてくることがあるが、お断りするんだそうだ。そのハグは、有色人種のためのハグではなく、白人がやるべきこを棚上げしてその場をしのぎたいだけのハグだからだ。このワークで、ひたすら差別体験を聞き、同意することも、励ますことも、許しを請うこともできず、ただ聞き、有色人種の人と正面から至近距離で目と目を見て向き合うこと。これは白人にとって、自分の特権を自覚し本当のアライになるために効果がありそうだと思った。

写真は、ワークの前にこれらのことを注意しようと説明されたスライド。

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てけとーな訳。
●理解するための真の傾聴。単に返答したり、擁護することではない。
●言葉について明確にするよう尋ねる。同じ言葉を使っているというだけで、全員にとって同じ意味を持っているわけではない。事前に定義しなければ、誤解と不満を招く。
●対立した時の自分のリアクションを認識する。こうした話題には対立がつきものだ。目標は対立への対処や、どうやりくするか?なので、単に対立を避けたり終わらせようとするならば、問題は解決しない。
●人種主義の全体的な性質を認めることなしに、個人の体験に焦点を当てる時、それに気づくこと。(人種差別は常に構造の中で起こるので、個人的な物語にして矮小化しない。)


セッション4(人種差別)5:00-5:30

最後はセッション1の最初の大きな会場に戻り、まとめ。今日目標にしてきたことを全体で確認。やっぱり最後も、知らない人とペアになり、今日の感想、学んだことなどをシェア。これを2人ぐらいとやったと思う。
しかしもうこの頃の記憶が定かでない。何せあまり寝れない14時間の夜行バスの旅で、朝9時にフィラデルフィアに到着した足で9時15分からこの怒涛のワークショップに参加したため意識が。。。そんな状態だったのでその後財布をなくしてしまったのでした。幸い、ワークショップで友達になった人に電話を借りてカード会社に連絡してクレジットカードを止めてもらうなどすぐにできたのでよかったです。他にも会場で友達になった人が、飲み物をおごってくれたり、晩ごはんを買ってくれたり助けてもらいました。(無料の食事がでるのは木曜、翌日からだったので。)
感謝!!