LGBTQ洋書読書会とか

新設Cチーム企画主催者が、元々は「リバティおおさかを応援する!」というブログでやってましたが、引っ越ししまして、最近ではLGBTQの洋書読書会やその他の情報をごった煮状態で掲載していますv

WS報告「鳥、蜂、ユニコーン、オオカミ:性的虐待に対抗するために子供たちと性を語る」

「鳥、蜂、ユニコーン、オオカミ:性的虐待に対抗するために子供たちと性を語る」
Birds, Bees, Unicorns and Wolves: Talking With Children About Sex to Combat Sexual Abuse
1/21(土)9:00-10:30
【プログラムから概要】
クィアな親またはクイア/多様なジェンダーの子供を持つ親として、セックスという気まずい、しかし重要で避けて通れない話題について議論するのは何歳が適切なのか?学校で性教育をする機会はほとんど失われている。どうやって若者たちは重要な情報を得ることができるのか?何歳が適切なのか?子どもたちへの愛、セックスそして関係性についての社会的な語りをどうやって再構築していけるのか?個人的社会的(に許容される)セックスについての理解にどう取り組んでいけるのか?性的虐待に対抗するための仕組みと、子どもたちと若者たちの力となるツールとしての、総合的な性教育の理解のために協力しましょう。
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30人程度の小さなワークショップだったがおもしろかった。最初に隣同士2組になり、自分が性教育を受けた体験について、どんな性教育が理想的かを自己紹介とともに話し合うように言われたが、いつものごとく、両隣の人は私と逆方向の人とペアになり、ぼっち。いいもん。朝ごはん食べたかったし。気力があれば隣の人たちに混ぜてもらうのだが省エネモードだったので、ただ林檎食べながら隣人の会話に聞き耳を立てるのみでやり過ごす。ペアやグループでの話し合いを安全に活発に行うために次のようなグランドルールが配られていた。参考までに。

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■グランドルール
合意と相互尊敬は性解放ワークの基盤です
●「私」を主語に、一度にひとりずつ話す。(「私たち」と勝手にまとめない。)
●積極的な聞き手になる。自分の番で話すことについて考えるよりも、今話している人に集中すること。
●場を共有すること。参加しないとか、独り占めするとかは無し。
●お互いについてよく考える。
●何か言ったりやったりする前に、それがどんな影響を及ぼすかよく考える。
●最小限に反応し、最大限に行動する。
●時間と場所を尊重する。(迅速に答える、ケータイいじらない、休憩時間を守る)
●プライバシーを尊重する。その場で話されたことを勝手に他に漏らさない。
●納得したことを共有し、自分を大切にする。


全体のシェアでは、「快楽を基本とした性教育が必要」「異性愛中心主義でない多様性を包含したもの」「セックスを恥としてとらえないもの」「セックスを親密性と結びつけた説明があればよかった」「感性を大事にする性教育」「HIVやSITへの偏見を助長しない語り口」等々があげられた。印象としては、多くの人にとって性教育は非異性愛者として抑圧されたり、性的なことは恥という概念を植え付けられたりしてきた嫌な体験だったようだ。
その後、主催者の3人がそれぞれの性教育の体験を語った。ひとりは黒人女性で、性的虐待がある家族で育ったことを人種、階級、文化背景などと絡めて語っていた。幼い頃からきょうだいも自分も親戚からの性的虐待に合っており、母もその被害者だったが母からの無言の圧力でそのことは一切家族で話すことはなかったという。黒人であることで性的な対象であり得ないという社会からの偏見や圧力などもあり、被害を訴えにくかったりして、健康な自己肯定感を築くのが大変だったらしい。そもそもの身体的肯定感が低いため、先の全体シェアで出た「喜びベースの性教育」というのは、抑圧された身体である有色人種にとっては難しいことだともコメントしていた。
その話を受けて、会場からはインド系の女性が宗教的に厳しい家庭で育ち、性的なことはいっさい教わらなかったと言っていた。生理についても知らず、血が出て死ぬかもと思ったり、どう対処したらいいのかわからなくて、生理が来てからしばらくしてからナプキンの存在を知ったとも言っていた。学校で習う前に生理がくる子もいるので家で聞けるのが一番だよね。(私は初潮は中二と遅かったので既に学校で習って対処方法は知っていたけど、性自認男だった当時の中学生としては絶望中で、もちろん家族には言わず、こそこそナプキンを探して使っていたところを見つかり「あんた生理きてたの」と数か月後に赤飯を炊かれたのでだった。姉が二人いたのでナプキン入手などは困らず済んだ。)
主催者の二人目が自分の子育て体験を語っていておもしろかった。息子が3~4歳の時、肛門を触ったり指を利たりすると気持ちがいいことに気が付き「おかん、気持ちいいでこれすると!」と言うようになり、おお目覚めたなと思って「そうやねん、気持ちいいよなそれ。」と快楽肯定の方向で対応したとのこと。その後「おかん、指いれて!」と言ってくるようになり、むむ!これは、となり「そうやって楽しむのはいいことやけど、お互いの了解を得てからでないと、そういうことはできんのや。」息子「ぼく了解してるやん!入れて!」と言われ、むむ!「あんたのしたいことと、おかんのしたいことは違ってて、おかんは別に指入れたくないんや。」と返答したとのこと。その後、息子が十代に成長した頃、レズビアンのセックスが気になると言ったことがあったので、バービー人形を用意してこんな感じやでと実演したところ「もーやめてー」と言われたらしい。素敵なお母さんだよね!!性についていっさい語られることのなかった私の家ではありえない会話だわ。性教育に興味がある人でない限り、一般人だったらどう親が言って来たかがそのまま子供への対応になるよねたぶん。両親は親や周囲から語られてこなかったから、私たちにも話し方を知らなかったんだと思う。
その後、またペアになり、初体験の時に自分に足りていなかった情報、スキルはなんだったか?ということについて体験を話し合った。私とペアになった人は、初めての恋がいきなり不倫だったそうで(十代で重いよ!)健康的な信頼関係の築き方とか、周囲への助けの求め方などが当時必要だったと思うと言っていた。私は初体験と名付けたい体験は高校生の時で親友だったんだけど友達と恋人の境界がわからず「性的なこと」とはいろんなレベルで考えられることを知っていたらよかったと話した。性的欲望、恋人関係、親密な信頼関係、モノガミー、独占欲、永遠の誓いなどが「恋愛」という一言で片づけられていたように思う。全部ひとつにぶちこむの無理やし。それと、恋愛の始め方、続け方などはよく語られるが、平和的な別れ方を誰も教えない。LGBTQ業界で付き合う別れるとなると、別れ方は大事だと思う。コミュニティが狭くって絶対またどこかで顔を合わせることになるからだ。下手をすると、恋人と別れただけなのに、それに付随して友達全員を失ったり、コミュニティに行けなくなったりして生活すべてに関わってくるのだ。
全体の共有の時間では様々な意見が出た。
「Noと言う権利」
異性愛中心でない情報」
「性的行為をしなくても関係性を築けること(Aセクシュアルについて言及するなど)」
「体と欲望を理解する枠組み」
「自尊心の保ち方」(例えば黒人なのに性的に見られたなら、普通はそれ以下の扱いなのだからそれに感謝すべきなど。)
「セックスは気持ち良い、心地よい体験となること」
「体の快楽を探求してもよいという意識/恥ではなく」
「セックスについて語っても恥ずかしくない環境」という意見で紹介されていた絵本。
■Sex is a Funny Word

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「安全で平和的な別れ方(付き合い方や長期関係維持ばかり焦点が当たるため)」
「射精がセックスの終わりのサインではないこと(射精しないと終われないという思い込み)」
「愛と関係性のレベル分け(体、感情、社会的に準備できているかセックスをする前に確認すべき)」という意見で紹介されていたリスト集。

www.scarleteen.com



性的虐待は身体的なものだけでなく、精神的なものもあるということ」
「人との境界線の守り方」という意見のところでは、下記の「力と支配の車輪」が紹介されていた。DVの構造を図式したもの。
■Power and Control Wheel

www.youtube.com

日本語になってるやつ
■ドメスティック・バイオレンスが起こる力関係 - 神奈川県ホームページ

最後にツールキットを作成中なのでご意見募集中とのことだった。こうした細かい作業から実践的なキットが作られていくんだろうな。個人の体験を積み重ねていくことの大事さを感じます。地道、地味でも確実に良いものができそう。日本で感じてたことは、あちこちでバラバラに行っている事例研究が体系的にまとめられることがなくて現場に使えるものとして還元されない印象があったが今はどうなのや。「性はひとりひと違う、ゆえにそれぞれのケースは違う」というのは内側向きの個人尊重の視点で良いんだど、問題解決の視点からは法則性や解決法を引き出すため外向きに見て行かないとよね。ミクロとマクロ、個人を尊厳を守るということをピボットに、そのためにできることはあらゆる角度からやるという360度の視点で見て行く調整役が必要ですな。

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ざっくり上記のチラシの訳として。

「親、保護者の皆様へ。’お話し:親/保護者お話しキット’は、扱いにくい性についての話をどうやってコミュニケーションし、教育しそして乗り越えるかについての、コミュニティベースの手引きです。このツールキットは、セクシュアリティについて子どもたちと語り合うのを助け、子どもへの性的虐待を防ぎ、終わらせることにも役立ち、生活を良くします。コツや陥りやすい罠、成功例、ゲーム、恐れ、コミュニケーション方法など、共有したいことはありませんか?または他の人に聞いてみたいことはありませんか?」

いつかまた性教育の教材を作りたいと思っているので、このワークショップは参加してよかった。日本で性教育をやる時につきまとう、既存のカリキュラムや教育委員会など、いかに障害をくぐりに抜けるかということばかりを考えてしまうが、もし何の制限もなく好きなようにできるとしたら、どんなものになるだろうか。既にアメリカで出ている評判が高いものをチェックしながら、教材作りの参考にしていきたい。

大会で出会った友達がおススメしていた本。だれか日本語訳して。
■The Gender Book

 

■主催者団体  The HEAL Project

 

WS報告「リーダーシップと行動のための養成グループのレセプション:急進的な対抗としてのLGBTQの歓喜」

「リーダーシップと行動のための養成グループのレセプション:急進的な対抗としてのLGBTQの歓喜
Academy for Leadership and Action Reception: LGBTQ Joy as Radical Resistance!
1/20(金)8:30-10:00pm
【プログラムから概要】
急進的な対抗としてのLGBTQの喜びと芸術のパワーを祝いながら、新しい人たちと出会い交流しましょう。有色人種の人たちが毎日直面している受け入れ難い不平等や暴力から、連邦議会での宗教的理由による適用除外やトランスジェンダーへの攻撃まで、主催者は運動を通して多くの困難に立ち向かいました。食べ物や飲み物(アルコール含む)を楽しみながら、芸術、真心、笑い、感謝の気持ち、そしてコミュニティを感じるひと時のために、リーダーシップと行動のための養成グループに参加してください。LGBTは信仰的に間違っているとか、LGBTは信仰を持たない人などという間違った考えを壊すために頑張っている仲間たちからの報告があります。宗教の名のもとに行われている危害に対して、私たちが再度取り組むことが重要であり、私たちの夢と人種と性別の平等を実現していきます。再結成、反映、再貢献、大騒ぎをしに来てください!
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ホテルの会場には軽い立食パーティのようなセットがあり、食べ物や飲み物も無料だった。(お酒は有料。)椅子付きのテーブルや立って食べる用の高いテーブルには人がぱらぱらと集まって歓談。そんなに人は多くなく、50人ぐらいだったと思う。いろんな団体が団体紹介をする時間だと思ったら違った。レセプションは、この大会主催団体の取り組みの紹介とお金集めのためだった。
この大会運営のために多くの人が関わっていることが説明され、会場の人も多くが運営スタッフのようす。若者リーダーとして大会で動いてきた若者がPPTで写真を見せながら、どのようにリーダーシップを学んできたかを振り返って説明していた。この人は黒人のトランス男性で、親にトランスを反対され田舎から一人で出てきて、はじめての都会に心細く思いながら大会のスタッフに加わり、大会代表者に育ててもらったことを涙ながらに語っていた。大会準備のため、いろんなファンドレイジングや宣伝のキャンペーン、リーダー養成合宿みたいなのもやっているらしく、コミュニティ形成にしっかり時間を使っていることがわかった。その他の若いスタッフも自分の体験、成長、どれだけ自分の人生がこの大会に関わることで変わったかを語っていた。
若い才能を応援するということで、黒人の女の子やトランスの中高校生(どちらも詩人として有名な子たちらしい)をレセプションに招待していて、報告の合間合間に詩の朗読を披露してくれていた。詩の朗読って日本ではあまり出し物として聞かないけど、こちらでは割とメジャー。パーティの出し物や、感謝の気持ちのスピーチの中に織り交ぜたりと身近なもののようだ。韻を踏んでたりリズミカルだったりするんだけど、残念ながら私の英語力では聞き取れないし意味はわからない。でもすごい拍手喝采だったので若者たちはすごくいい感性を発揮してたんだと思う。こうした中高生を読んでこれるのがまずすごいよね。中高生でカムアウトしてるってことだし、大会が旅費出してても、親とか家族が協力的でないと来れないだろうし。

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(写真は中心部の公園にあるロバート・インディアナがデザインLOVEモニュメント。フィラデルフィアの重工な趣の建物の中に突然現れるポップな存在感がよし。本文とは関係ありません。)


大会の代表者は毎年変わるのか、今年で任期が切れるのか、代表者に花束贈呈と複数の人から感謝のスピーチがあった。大会運営チームの代表者は中年の黒人男性で、その他の会場にいるスタッフもハグをしに行ったり泣いたりしていて人望のある人なのだなーと思った。(運営はフルタイムの職員なのか、ボランティアなのかは不明。)このレセプションを司会で仕切っている人も黒人女性で、表に出る人種のバランスを意識的に調整しているようにも感じた。白人至上主義で白人優位になりがちな場、有色人種が排除されたり周辺化されている社会でいかにフェアな場を作るかは本当に白人側が意識的にやらないと変わらないことだと思う。(余談だけど、トロントでよく行くMCC(メトロポリタンコミュニティチャーチ/カナダ最大のLGBTQの教会)では60%ぐらい白人なんだけど、それを意識してるのか、実際の人種割合とは逆で使われる写真などでは70%ぐらい有色人種だ。←ミサの間、聖歌の歌詞などが大きなスクリーンに映し出されるんだけどそれに写真が入ってたり背景が写真だったりする場合。)
レセプションの最後には、再びスタッフがこの大会運営者養成プログラムがいかに重要かを熱く語り、そのためには2000ドル(24万円)の寄付が今日必要ですと訴えた。コミュニティの若者の未来を変えるため寄付してくれる人はいませんか、私たちの未来への投資だと思って協力してくれませんか!と強く訴える。静まり返る会場。きょろきょろ誰が手を上げるのか興味津々で眺めていたら、年配女性が挙手した!半額出すという。そこで司会者がもう半額を手伝ってくれる人いませんか?と呼びかける。出てこないので、500ドル寄付してくれる方、2人いませんか?するとスタッフと思われる人が挙手。司会者はその人にコメントを求めると「このお金がどう有意義に使われるか私はスタッフとして知っているので」と言っていた。司会者はさらに、100ドルを5か月寄付してくれる方いませんか?と寄付の敷居をだんだん下げていく。そこでぱらぱらと手があがり、2000ドルの寄付が確定したようだった。米式寄付の集め方、勉強になりました。中には寄付の使い道を指定するような人もいて面白かった。

私が日本でイベントを企画していた時は、インターネットなどを駆使して、いかに短期間に少ない会議回数で効率的に本番まで持っていくか、ということを重視していたように思う。コミュニティ作りという観点からは、時間をかけて植物を育てるみたいにじっくりと人間関係を作っていくことが大事かもしれない。このレセプションに参加して、大会というイベントをあらゆる角度から活用してコミュニティの発展につなげているなあと感じた。長時間労働、休日出勤が珍しくない日本で、こうしたコミュニティ作りをそのままマネすることはできないが、人間関係作りがコミュニティ作りと考えるなら企画の仕方を工夫していけるかもしれない。

WS報告「セックスワーカーの分科会」

セックスワーカーの分科会」
1/20(金)6:30-7:30
【プログラムから概要】
この分科会は、現在セックスに関連する仕事に従事している人たちのみが参加できます。セックスに関連する仕事とは、売春、エスコート(有料で客と一緒に時間を過ごす人)、キャムモデル(Webcam model=テレクラのPC版)、アダルトビデオ、ストリップ、シュガーベイビー(パトロンを持つこと)、その他のエロティックな仕事をひっくるめます。セックスを対価にお金、薬物または住まいを取引している人なら、それがちんこやまんこやおしりでのセックスに関わらず、ようこそおいでください!他の似たような(あるいは異なった)経験や健康法などについて話したり、全米の地元主導の団体について学びましょう。これはネットワーキングの良い機械となることでしょう。
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15人ぐらいの小さな分科会で、様々な情報交換がされた。マンゴーやスナックが差し入れられてて美味しく頂いた。参加者は性別も見た目も人種も年齢もいろいろな人たちだった。
最初に上がった話題は、この大会の参加費が高すぎること。1日参加だと、135ドル(15000円ぐらい)、5日通しだと一般が445ドル(47000円)、学生料金は半額、経済的に困っている場合は200ドル、みたいな感じだったと思う。コミュニティの声を吸い上げて全体のムーブメントにしていくのなら、誰でも参加できるように無料にするべき!という意見が出ていた。特に、有色人種のトランス女性などは経済的な弱者で、声を届けにくい。中には自分では負担できないので、大学に申請して参加費を払ってくれたという人もいた。(大学優しい!)そしてなんと、分科会を持つにもお金を払わないといけないらしい!分科会してもらうのに大会がお金払うってんならわかるけど、逆かい。じゃあお金持ってるところしか分科会開けないってなったら、貧乏団体来れないし声も出せない。うーん。(私はもちろん無職なので200ドルにさせて頂きました。18イベントに参加したので1つ1000円ちょっとと考えると妥当かと。4日間無料飯を食べまくったし、個人的には元取ったと思ってます。)これについては、分科会として高い主催者に要望書を提出しているとのこと。このコーカス(当事者向け分科会のこと)とは別に、セックスワーク関連の分科会が2つしかないのに、それが同じ時間帯に組まれて関係者がどちらかにしか参加できないなど、大会側の配慮のなさについても言及されている。

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次にあがったのは、安全対策について。さすが、今の時代便利なアプリが出ているそうで、知らない人からの電話があった時に、それがスキャムかどうかお知らせしてくれるんですと。知らない番号に出てみると録音の音声が流れてることがあるんだけど、それは企業がやっている電話調査。またスパムのテキストが送られてくることもしばしば。こういうのを無視/ブロックするのに下記のアプリ、ミスター・ナンバーというのが便利だそう。また、バリファイ・ヒムというアプリは、オンラインデートを利用する女性向けに作られているそうで、ブラックリストに載っている人からの電話を自動的に拒否したり、危険人物のデータがいろんなルートから日々アップデートされて反映されるらしい。あと、なんて名前のアプリか忘れてしまったんだけど、一定時間内にリアクションをしない場合、登録した連絡先に連絡が行くというもの。仕事中に事件などに巻き込まれた場合、緊急連絡先に指定した友達に自動的に連絡が届き、助けを呼べる。こうしたちょっとしたことだけでも、ひとりで働いている人には心強いことだ。
■Mr. Number: Call Block & Reverse Lookup
■VerifyHim App

インコール(自分の所に客を呼ぶ)かアウトコール(客の所かホテルなどに自分が行く)かという話では、ラテン系のトランス女性のセックスワーカーたちの支援をしている人が、トランス女性の場合、見た目は男性でシンプルな女装のみする人から、手術も済ませた見た目完全な女性までいろいろだけど、いったんトランスを始めたら外に行くのは危険が伴うことが多いので、インコールを好む人が多いと言っていた。また、サポートの面では、経済的に不安定なため、客を探してあちこちと都市をめぐる人もいるそうで、そうした人への継続的なサポートが難しいとのこと。他の人からは、インコールをする場合は、自分の本名が特定できる情報、郵便物などは部屋に置かず、自分の住まいではないかのように振る舞う(家で待ってるけど、少し遅れるかもとか言う。)というような安全策を敷いているそうだ。また、クライエントのホテルに行く場合は、説明なしに複数の人が部屋に潜伏している危険性を回避するため、部屋で会わずロビーで会うとか、チェックインを目の前でしてもらうなど工夫しているらしい。なるほど。

スコートなどをしている多くの人は、主な宣伝はネットとなるのでどのサイトが良いか、どんなサイトを利用しているか、という情報交換もしていた。つい最近、アメリカでも有名なBackPageというサイトがエスコートのカテゴリーを閉鎖したらしく、困ったねー、次に使える場所はどこかねーという話もしていた。無料で広告を出せるサイトもあるが、やはり有料のところの方がたくさんの人に見てもらえる。最近ではその広告の支払い方法などが変わってきているようで、Bitcoinなどインターネット通貨が使用されている。ネットの通貨はそれを取り扱うためのアプリが必要だし、その通貨を一般社会の通貨で買って換金する作業も必要だ。Bitcoinはクレジットカードからも買えるが、町中にBitcoin用のATMがあり、その機械に現金を入れて出てきたバーコードを、ケータイのアプリで読み取り、お金を転送することもできる。使用する通貨も支払いの選択肢も増えてきているらしい。サービスに対する支払いの受け取りももう現金でやりとりするのはやめたという人もいた!例えば、会員制のところに登録して働いている場合、お金は事前にネットを通じて支払われ、それが本人のところに振り込まれる。あるいは、アマゾンのギフトカードを使うと、ネット上でやり取りできる上にお互いに匿名性を守れるため便利らしい。へー。

日本でトランスジェンダーピアサポートの場に15年近く居たが、セックスワーカーの友達は少しだけしか知らない。私が会に入ったころ、代表の人がセックスワーカーで、フェミニズムやゲイリブ、トランスジェンダーのこと、本当に色々なことを教えてくれた。いろいろと知る中で、セックスワークについてのイメージが完全に変わった。でもその数年後、その人は亡くなってしまった。今でもあの人ならどう考えるかなあと、思い出したりする。大事な恩師なのは変わらない。
セックスワークで食べていってる職業人とまでは言わないけど、でもちょっとやってる程度の人ならたぶんけっこういただろうに、会でセックスワークの話しにほとんどならなかった。「お水」の人たちはまあまあいた。お水以上の話しにならない。言えない雰囲気があったのかもしれない。昼間のサポートグループに来れる人は限られるのかもしれない。そういう層が来てなかったのかもしれない。そもそもトランスであることで、セックスについて語りにくいのかもしれない。この大会ではトランスでセックスポジティブになるための分科会が2、3あった。次回はどれかに参加したい。

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(写真はフィラデルフィアの市役所。会場からすぐ近く。トランスジェンダーの旗が星条旗といっしょに上がっていた。この大会をしているかららしい。すごい!その他にもレインボーフラッグが飾ってある建物もいくつか。)

 

以前にも書いたかもしれないが、トロントでLGBTQコミュニティに参加していると、ボーダーレスを感じる。日本ではきっちりした分類があったように思う。LGBTQの会に行けば、LGBTQの人だけ、障害者の会に行けば、障害者だけみたいな。こちらでは、LGBTQの会に行ってもそこには、障害者も外国人も若者も老人も派手な人も地味な人もごちゃ混ぜに存在している。LGBTQの会だからと言って、LGBTQの健常者で国籍のある人の話しだけしているわけにいかないのだ。いつも問題は重複していて、交差している。だからLGBTQの会と言ってもいろんな話がでてくるし、それに対応しないといけない。それは、障害者の会に行っても同じで、障害者のLGBTQがいるので、障害者の会ではそうした人に配慮せざるを得ない。もちろん数の関係で息苦しく感じる時もあるだろうが、存在は認められている。そのままの自分で存在できる。
日本でもきっといろんな人がいたのに、気が付かなかっただけだろう。マイノリティのグループでも同質性を求められるため、グループはワンイシューにな りがちだ。ダブルマイノリティであることが言いにくい。LGBTQの会に行くと、みんな周囲に合わせて、自分の中のLGBTQな側面だけを出して交流する。空気を読む。そのままの複雑な自分のまま、そこに存在してもいいと思いにくい。日本では障害者の会で、あるいは在日外国人の会で、LGBTQの人がカムアウトするのは難しそう。LGBTQの会でセックスワーカーがカムアウトするのも難しそうだ。マイノリティ団体同士の横のつながりを作るのはもちろん重要だが、すでに形成されている会の中での多様性をどうやって掘り出して、許容、包括していくかも、取り組める部分だと思う。

例えば、車いすのLGBTQがLGBTQの会に参加するようになれば、何かイベントを催す時に、車いすの人が支障なく参加できる会場を選ぶように実務として変化が起きるだろうし、会の後でお茶に行くのに、どこのカフェや居酒屋が車いすが入れるか、日頃からチェックするようになるなど、思考さえも変わる。同じように、ろうのLGBTQがLGBTQの会に参加するようになれば、おのずと手話を知りたいと思う人も増え、イベントをする時に手話通訳をつけることが当たり前になるかもしれない。それによって、もっとろうのLGBTQが参加しやすくなり、もしかすると、手話がつくイベントならと、ろうのアライも参加してくれるかもしれない。
そもそもは、その会が誰にでも開かれているとアピールするところから始まるが、ちゃんと参加するには手話通訳が必要だと堂々と主張できるろう者の存在が欠かせない。アクセシビリティは人権だと思っていなければ主張できない。主張を受けて、どんな会場設定(立地や建物の構造だけでなく、椅子や机の並び)にするか、予算を組むか、会のシステムが実務的に変わっていく。入口がフラットないいカフェを見つけたから知らせようとか、あの人と交流したいし手話予習しておこうとか、手話わからんけどメモ帳とペン持ってたら便利かもとか、人の思考も現実的対応のため変わっていく。そうした細かいことがコミュニティの形を変えて行くとことだ思う。

具体的にこちらでよく見かける配慮は、
●食事を出す場合、
ベジタリアン・ビーガンオプションを用意する
事前にどんなアレルギーを持っているか聞く
アレルギーがある人のために材料を全て表記する
●広報時にできること、
車いすがアクセスできる会場かどうかの情報
車いすがアクセスできるトイレがあるかどうかの情報
ジェンダーフリートイレがあるかどうかの情報
ASLの通訳がつくかどうかの情報
セントフリー(香水など匂いのあるものはつけてこないように)
●会場で
自己紹介で名前と使いたい第三人称を言う
ハグやパーソナルスペースの確認(ハグ文化だけど、したくない人がいるというお知らせ)
●主催者として
会場が先住民族の土地であったことを共通認識として確認し、敬意を示すこと

 

要求・主張できるように包括的な場にすること、要求すること、それを受けて実行すること、を同時進行して具体的な変化が生まれ、一旦形式ができればその場に応じた変更を加えて引き継いでいけるはずだ。

 

 

WS報告「セックス、クイア、健康の平等:コミュニティの行動計画作り」

「セックス、クイア、健康の平等:コミュニティの行動計画作り」
1/20(金)4:45-6:15

【プログラムから概要】

私たちのコミュニティは健康の平等を享受するに値します。しかし、全米のLGBTQコミュニティにおいて、クィアの人たちは深刻な健康問題を経験しています。そのほとんどは早期発見によって予防可能、治療可能なものです。この相互作用的な分科会では、LGBTの健康平等のために、健康増進プロジェクトやセックスポジティブ啓発キャンペーンの成功例を共有する予定です。また各コミュニティでLGBT健康平等を達成するための行動計画を作ったり、コラボレーションと資金調達の機会についても議論します。
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 発表者のAdrian Shankerさんは、警察トレーニングの分科会のリズさんと同じ、ブラッドベリー・サリバンLGBTコミュニティセンターの人で、代表者。教授でもあるらしく、ワシントンのコロンビアン大学で「LGBTの健康」という1年のコースで教えているらしい。(認定証が出るプログラムらしい。)そんなLGBTの健康に特化した学問分野ができていて、コース終了認定書もでるなんて、さすがアメリカ!関係ないけど、エイドリアンさん、小さな帽子(キッパ)をかぶってらして、ユダヤ人の方だとわかる。順を追ってLGBTの健康を促進するための行動計画つくりのためのステップが説明された。

1、健康平等の枠組みとは
LGBTQの健康というと、だいたいいつもHIV精神疾患という話になるが、癌や喫煙なども同じように深刻な問題だ。また、ひとつの問題だけではなく、だいたい複数の問題が重複している。HIV+精神病+薬物などなど。これらを扱う場合の機能的な問題、病院、クリニックが使いやすいかどうか、というのも重要な要素だ。同性愛/トランス嫌悪的な対応がLGBT患者を医療システムから排除する。トロントではよく癌検診に行こうというキャンペーンを見かける。レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーそれぞれに特化して呼びかけるポスターやフライヤーがある。検診を受けにくいバリアがLGBTQの人たちにはあるからだろう。

 2、LGBTの健康を測定する

LGBTの総合的健康についての調査が行われているそうで、調査結果がウェブにあがっているのを紹介してくれた。コミュニティのニーズを正確にとらえるためには調査は不可欠だ。例えば、たばこの喫煙率について、一般平均と比べるとLGBTQは明らかに高い。トランスだけ見ると平均の倍にもおよぶ。こうした調査をさらに進めて行くために保健庁などとの連携を作ろうとしているそうだ。

LGBT HealthLink

www.lgbthealthlink.org


■LGBTの喫煙率についての報告書(PDF)

3、ケアの妨げになっているものは何か?

LGBTに特化した医療機関がないこと、カムアウトしているLGBTの医者、医療従事者が少ないため、医療を利用するのが敷居が高い。保険料のカットも深刻な問題らしい。下記のビデオではトランスがいかに医療から疎外されていて、医者にかかりにくいかを伝えている。待合室、初診受付の問診票、面接などの場面で、LGBTフレンドリーであることを示し、患者の不安感を減らすことが可能だ。紹介された下記のビデオがとてもわかりやすい!古い映画風の作りもおしゃれ。単に咳が出て医者に来たのに、トランスの人は診たことないから他へ行けと言われるところが印象的。
「Vanessa goes to the Doctor」

www.youtube.com


LGBT患者層にとってのケアに対する障害(下のスライドの訳)
●性別表記など、異性愛前提の限られたインテークフォーム
●医療従事者との否定的な過去の体験
LGBT文化への理解の欠如
LGBTの健康問題への医療的適用性の欠如
●リスクの高い行動についてのLGBTコミュニティ内での知識の欠如
●医療従事者のセックスを恥とする感覚、一方的な決めつけ
LGBTの医療的ニーズをカバーしない医療
LGBTの医療従事者を見つけにくい、少ない
●医療従事者にカムアウトしないことにしている
●医療従事者が失礼な質問をする
●比較的LGBTの健康増進のための資金配分が少ない
●乳がんは女性のみなど、性別に基づいたキャンペーン

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4、セックスポジティブで、クィアフレンドリーな実践
先にトランスの喫煙率が高いという話が出たが、調査の結果、はじめての喫煙がゲイバーであることが多く、一般の喫煙者との行動差が見られる。タバコ会社はLGBTは良い客だとわかっていて、ゲイバーにすごく安くタバコを卸すんだそうだ。一部のLGBTQにとって憩いの場であり、解放される時間でもあるバーやクラブは、生活一部でありそこでの喫煙は用意に慣習化しやすい。それに加えて社会的なストレスが喫煙の常習化、依存へと進展する。効果のあるキャンペーンをするためには、そうしたLGBT特有の行動による健康問題の背景を知っておく必要があるとのこと。下記は禁煙キャンペーンのためにかなりお金をかけて作ったビデオ。お金は政府などの助成金らしい。
「Be Known for Your Flawless」

www.youtube.com


制作者は、ゲイバーなど客層に影響が出るように、Youtubeのトランスセレブたちを起用して派手なものにしたらしいが、賛否両論だった。「トランスをバカにしてるのでは」とか「あまりに商業的」などの参加者からの声。

「This is Free」こちらがYoutubeチャンネルで、その他の素敵なキャンペーン動画がたくさん見れます。

www.youtube.com


こちらは地方自治体からの助成金で作った精神衛生向上のためのビデオ。

「Don't let shame decide」

www.youtube.com


どこからお金を取ってくるかでやっぱりキャンペーンの雰囲気も変わってくるらしい。あまり派手なことができないお堅い機関経由だとこうしたまじめな感じになる。エイドリアンさんはこのビデオは良くできていると言ってたけど。うーん、そうなのか。よくわからん。

タイとアメリカで、ゲイコミュニティへ啓発のポスターの比較もしていた。PrEPを飲んでHIV検査をしよう啓発するタイ政府のポスターは、裸体男子が絡まりあって、思う存分ヤろうみたいな雰囲気。ずいぶん思い切ったやり方をするもんだねタイ政府。アメリカのものは、一方的な判断を下されるような医者には行かず、コミュニティで紹介されている安全なLGBTQフレンドリーな医療機関に行こうという啓発。医療福祉を平等にするには、医療から疎外されていないと感じてもらうことが第一歩と考えているようだ。病院の中をフレンドリーにすることはもちろんだがそうした待ちの姿勢だけでなく、こうして外へ呼びかける先手を打つような積極性も必要だと思った。

 5、行動計画作り

1、身の周りのニーズを掘り出す
2、主要なグループを呼び集める
3、試験的なキャンペーンを共同的に作る
4、限られた範囲でキャンペーンを試験的に実施
5、資金集めの実演として試験版を使う
6、大きな規模のキャンペーンを立ち上げる

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例としては、ゲイ・バイセクシュアル男性のPapTest(直腸がんのテスト)のキャンペーンの取り組みがあげられた。直腸がんに対する意識は低く、ほとんどの人が検査を受けたことがない。そこで、医療関係者にPapTestについての研修を行い、キャンペーンのイベントをするためにLGBTコミュニティ、保険会社、教会、ゲイバーなどを巻き込んだそうだ。ゲイバーなどでPapTestについての広報をするのは有効。バーのトイレなどに掲示物を貼るのは意外と効果があるらしい。結果は300人規模のイベントで10人テストを受けたとのこと。ちょっと英語がわからなかったけど、これが成功例だったのか不明です。少なくないか10人て。

質疑応答ではFtMへのサービスを充実させたい、具体的にはもっと情報が届くようにして医療へのアクセスを容易にしたいという人がいて、エイドリアンさんが実際の行動計画を立てる道順をいっしょに考える対話をしていた。医療へのアクセスって漠然としているのでもっと絞った方がいいとか、ニーズをしっかり聞き取って、胸オペについてなのか、ホルモンについてなのかなど、カテゴリーを分けて取り組む方がよいとか、どんな媒体を使って情報発信するかなどについて話し合っていたと思う。すいませんが詳細は忘れました。

基本的にはLGBTQ業界に関わらず、医療や福祉サービスまたは企業が顧客にリーチする時に立てる行動計画と同じ方法だと思うけど、LGBTQならではの部分にしっかり気を配るということだろう。そのためにはLGBTQ特有の行動様式や文化、社会構造の中での位置づけ、それにどんなリスクにさらされているかなどを調査し理解しておく必要がある。ここで気づいたことは、私は今まで日本でやってきた活動やイベントで、Stakeholder(利害関係者)の枠を狭く設定してきたかもしれないということだ。イベントの定義の仕方次第で、もっといろんなところを巻き込むことができ、それによって付加価値がついたり、新しい人をつなげたりする可能性が増える。ここにも、自分たちのことは自分たちだけでどうにかしないといけない、関係ない人を巻き込んではいけない、といった日本的倫理観が働いているように思う。

 

■主催者団体 Bradbury-Sullivan LGBT Community Center

www.bradburysullivancenter.org


■LGBT Health Graduate Certificate Program

 

 

WS報告「LGBTQ団体の警察へのトレーニング」

「LGBTQ団体の警察へのトレーニング」
1/20(金)3:00-4:30

【プログラムから概要】
参加者は、LGBTQの文化と用語を伝えるトレーニングために、参加者の団体または組織と共に、警官やスーパーバイザーにどう接触し、法的処置を促すための効果的な戦略を学ぶことができます。なぜこのトレーニングを受ける必要があるのかという説得力のある理由を警官に提示することも含まれます。基本的なトレーニングの枠組みと内容が説明されます。ワークショップの間に、参加者は自分たち専用の実装行動計画を作ることも可能でしょう。
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小さい部屋で30人程度の小さな分科会。すごく面白かった!まず、リズさんが超ダイクでかっこいい。百戦錬磨、研修のプロって感じの明快な話し方。
まず、基本的な姿勢から説明された。警官の教育は、軍隊が基本になっている。しかし、警官が扱う問題は軍隊モデルの訓練では取り扱えないということ。なぜなら市井の人たちは軍隊に暮らしてないし、アメリカの市民生活は戦争状態じゃないから。警官は仕事柄、取り扱う問題の性質上、本来はソーシャルワークとか、刑事司法的な視点や知識が必要なんだけど、ない。脱軍隊化が必要。

こちらで主催者が作ったトレーニング用のビデオが見れます。すごくわかりやすくていい!
トランス女性が運転している車を止めて質問する例。トランス女性が女性トイレを使用しているのを見た人が警察に通報した例。トランス女性がヘイトクライムで暴力にあった例。具体的な事例でどのように対応するのがプロとしての警察官かをわかりやすく説明している。このビデオがとても効果があるのは、リアルな警察官のおっさんが説明しているから、だそうだ。これがLGBTQ当事者が説明していたら聞く耳を持ってもらえないからだ。

www.youtube.com

まず必要なのは、生まれた時に割り当てられた性別と、性的指向と、性自認をしっかり分けて理解させること。次に、敬意を持ってプロフェッショナルとしての対応をすること。トランスコミュニティに積極的につながりを持とうとすること。●●してはないけないではなく、●●しよう、というポジティブな方法を提示すること。がポイントだったと思う。本人が希望する第三人称を聞くのは基本。(She/He/Theyなど)
ビデオの後にビデオの良いところと悪いところを参加者が挙手で言い合ったんだけれど、リズさんが発言者にビーズの首飾り(よくCNE(カナダ・ナショナル・エキシビジョン)のパレードで投げ与えられてるやつ)をなげて渡してたのが何かよかった。良いところは、非常に具体的。やるべきことが明快で理解しやすい。など。悪いところは、トランス女性しか出てこない。とても性別二元的で、見た目で性別がわかりにくいようなGNC(従来のジェンダーに従わない人)の人が出てない。有色人種人が少ない。導入部分でプレゼンターがLGBTQへのからかいを肯定しているように見える。など。これについてはリズさんは話しに引き込む方法として共感を得るために戦略的に用いたと言っていた。なるほどね。

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【あなたが言うこと】LGBTQコミュニティに対して適切で支援的なコミュニケーションは、警察を助け、下記のことを増進させ、向上させます。
A、犯罪の通報。コミュニティの情報と懸念を共有。敵対心の鎮静化。衝突回避。暴力の減少。被害者との協力関係。加害者の問題解決。公共の安全。警官への攻撃の減少。
B、偏見なしのコミュニケーションは、「私たち対奴ら」という対立や誤解を終わらせるのに役立つ。
C、全国の警察はこのLGBTQ研修を利用できるし、実際に利用することでLGBTコミュニティとの協力関係の強化に役立てている。
D、研修を受けることは、職業的専門性を高めることになる。
E、個人的な偏見を手放すことは、成功の第一歩である。
F、尊重、礼儀正しさ、丁寧さは信頼と安全を促進させ、サービスを強化する。
G、参加者は、市民を平等に扱うのにトレーニングは必要ないと感じるかもしれない、しかし。。。
H、LGBTQの人/問題について学ぶことは、理解をより深め、市民と訪問者の命の安全性と平等性を保障することに効果的であり、プロ意識を向上させる。したがって警察を強くすることになる。

 

そもそもこの研修がなぜ必要なのか、明確にしておく必要がある。トランス嫌悪によるヘイトクライムで殺されるトランスジェンダーが多いことはもちろん、トランスの1/4人が犯罪に巻き込まれたことがあるほどリスクの高いグループであることや、トランス女性というだけで警察官から嫌がらせを受けたことがある人も多くいることも伝える。

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【LGBTQ研修の内容】
●多様性のトレーニングは罰ではないことを断言しておこう。
●職業的専門性と尊重は犯罪被害者、目撃者、経営者、コミュニティメンバーそして加害者との相互作用を容易にすることを強調しよう。
●LGBTQコミュニティのリーダーたちが協力可能であることを確認しよう。

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【地方、州、連邦法】
A、差別禁止法---地方と州法は何か?
B、連邦、州、地方のヘイトクライム
C、ハラスメント条例---地方条例があるか?
D、ドメスティック・バイオレンス、配偶者パートナーからの虐待
E、セクシュアルハラスメント---性別に関係なくあらゆる管轄で違法
F、PREA(Prison Rape Elimination Act(刑務所レイプ排除法))---警察に関連している
G、ホルモン投与などトランスジェンダーの人々が必要とする医療を与えないことは、おそらく違法である
H、抗議者を規制する法律

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【PREA(刑務所レイプ排除法)が定めていること】
職員は、性器の状態を確定するためだけの目的で、トランスジェンダーまたはインターセックスの受刑者/犯罪者を調査したり身体的に検査したりしない。もし、受刑者/犯罪者の性器の状態が未確定な場合、医療記録を参照することによって、あるいは医療従事者によってプライバシーが守られた状態で行われた広範囲にわたる医療検査情報によって、決定されるだろう。


これと同時に大事なことは、研修は罰ではないということ。警官と言う職業人として知っておかなければならないのだ、ということ。ここで州や地方レベルで、差別法、ハラスメント防止法、刑務所法などがあれば提示するのが有効だ。警官の職務上関係ないとは言えない。(関連法について、そうした教育を警官が受けてないのが驚きだけど。)刑務所法には、トランスジェンダーのホルモン投与について、投獄中も保障されていると明記されてたり、勝手に身体検査をしてはいけない。またHIV陽性者の返り血をあびたら感染するとか本気で思ってたり、HIVについても正しい知識を持っていないので一通り説明の必要がある。あとジェンダーレストイレの必要性や、身分証明書の性別変更についての説明も。また、LGBTQのムーブメントが警察との軋轢からはじまったという歴史を紹介するのもよい。

 

この団体、何百もの機関にLGBTQについての講演やトレーニングを行っていて、おもしろかったのは、教員やソーシャルワーカーに効果があるLGBTQの写真資料(LGBTQの俳優とか有名人をちりばめたような)を使って、どんな人たちなのか説明するみたいなのは、警官には全く効果がないそうだ。むしろ、ただたくさんの顔をずらりと並べて、誰が女性トイレ、男性トイレに入ってもいいか?という問いの方が効果があるとのこと。(答えは「外見で決められない。」)つまり、警官へのトレーニングは、他の学校や企業相手などとは違うということ。やじがすごい。はじめようとしたとたん「ゲイに教えてもらうことなんかねえよ!」とかブーイングが止まらないなどなど。一緒にトレーニングに行ったリズさんの同僚の女性が帰り道で泣きじゃくり、もう二度と警察への研修は行きたくないと言うぐらい手強い、とのこと。LGBTQにからめて異性愛者や人種の特権の話をしようとすると、「白人であることに罪悪感を持たせようってのか!」と罵倒されるなど。
そういうこともあり、研修には必ず4人で行くようにしているらしい。うん、4人いたらどうにかなる、かも。実際にトランス当事者などを連れて行き、直接コミュニケーションしてもらうのがやはり効果的なようだ。一度知り合いになってみたら、次から似たような人に会った時の対応は明らかに変わるだろう。また、トランスの人は警官から嫌な目にあっているので、何かあった時に警察に協力するのをためらいがち。そうした悪い循環を起こさないためにも、日ごろからLGBTQコミュニティと協力的な関係を作る努力を、警察がするべきだ。ロールプレイなどで実践的な対応を知り、その感想を警官同士で共有してもらい学んだ実感にし、コミュニティセンターなどの連絡先をメモしてもらう。白人の率が高い警官の研修では、白人の人は自分の白人特権を使うとよいが、ロールプレイや事例を説明する場合は、必ず有色人種を登場させること、と念を押していた。

会場には、LGBTQで警察官の人、セキュリティ会社などで警備員に研修をしようとしている人、LGBTQの大学サークルで大学内の警官に研修をしたい人などなど。大学警察が酷いので該当の人たちを辞めさせるとかどうにかしたいという参加者からの質疑の中で、リズさんからは大学関係の警官や警備の組合はすごく力があるので辞めさせるのは無理だと思う、と回答。その手の仕事は年金も福利厚生もいいのでなかなか辞める人はいないそうだ。

実際に自分の州で警察研修をはじめたい場合、警察本部長や副本部長に連絡するのが一番早いらしい。その他だと、既に人種などの多様性について取り組みをしたことがある警察関連の部署、警察関連の公務員、州議員、市長、市議会議員、人権関係の委員会、教会の組織、進んだ教会、地元の進んだ大学/専門学校、企業家、地元の多様性のための組織。これらに連絡をして、警察での研修を実現できるコネクションを探し出し、実行まで持っていくのだそうだ。また研修に参加したり、協力してくれるLGBTQグループのリーダーやボランティア探しも重要だ。

最後に、今回の発表で使った資料などは後日ウェブ上で公開されるそうで、連絡先を残して置いたらメールをくれるというのでアドレスをリズさんに渡しておいた。
下記は研修を実施する際の段階的な説明。

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【調整ーステップ1】
●研修の第二部は、スライドを見せるだけの説明よりも、警官個人とっておそらくより効果的だ。
●この活動的なトレーニングには、警官と交流する意思のあるLGBTQ当事者のボランティアが必要となる。警官たちはLGBTの人たちとのコミュニケーションを練習することができる。
●やるべきことは2つ。
1)LGBTの人と適切な交流の仕方を学ばせる。
2)実際の個人的なつながりの結果として、協力関係作りをはじめる。

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【調整ーステップ2】
●LGBTQコミュニティのリーダーたちに、この研修に参加するように呼びかけるようにしよう。
●組織の代表者、実業家、活動家、聖職者、その他の要人たちを巻き込もう。
●この研修は単なる研修ではなく、警察との協力関係づくりであること忘れないようにしよう。これにより、警官は特定のLGBTのリーダーたちに連絡を取りやすくなり、LGBTのリーダーたちも特定の警官に連絡をしやすくなるのだ。

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【調整ーステップ3】
●いくつか、トレーニングビデオと似たようなシナリオを作っておこう。LGBTのボランティアにインタビューしたり、その他のコミュニティメンバーが経験した警官とのやり取りを参考にしよう。
LGBTであることが警察への通報の1つの要因である場合、もっとも起こり得る2つのケースは、1つ目はヘイトクラム/嫌がらせ、2つ目はドメスティックバイオレンスだ。他の考えられ得るシナリオも練習してみよう。

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【調整ーステップ4】
●研修にいる各警官が「敬意のある対応の向上」に参加していることを確認しよう。LGBTのボランティアは「敬意ある対応」をトレーニングの中で経験しているはずであることも確認しよう。そうすることで、全ての人が用語、情報、目的に自覚的になれる。
●研修のリーダーは、この練習のゴールを明示するために、一つのシナリオを演じて模範を示そう。
●参加者は自己紹介をする。
●3、4人のグループに分かれ、シナリオを一通り読んでから、どの役を演じるか決める。敬意のある言葉と丁寧なマナーで、適切なやり取りを練習する。

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【調整ーステップ5】
●大きなグループに戻る。
●やり取りで何が起こったかを共有する。
●問題または解決するため、または上がってきた問いを解明するため、質問する。

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【調整ーステップ6】
●連絡先を共有する。
●コミュニティで何かあった時、連絡先となることを引き受ける。


日本でトランスの人が警察から嫌がらせに合うことが多い、というのはあまり聞いたことがないし、なかった。北アメリカの状況と日本は違っているのは当然だし、また、私がそういう生活圏で生活していたからなのかもしれない。
例えば、こちらではトランスのセックスワーカーや団体が顕在化していて、LGBTQコミュニティで頻繁に声を聞くしイベントも見かける。警官と口論しているトランス女性っぽい人を道端で見かけることもある。ストリートで働いているセックスワーカーが職質などのターゲットになりやすいので、警察との接触率もあがってくる。私が日本にいたころは、もちろん活動家の人たちはいるが、北米ほどの声があがってなかったように思う。日本のLGBTQコミュニティ/運動は、ゲイやニューハーフなどセックス産業に従事している層を含んでないというか、分離してるというか、コミュニティの一部となっている感じがあまりしない。こちらのトランス女性の友達が「エスコート(売春)なんてみーんなやってるわよ」と言っていて、実際その多さには驚いた。トランス女性の中のセックスワーク従事率が日本と北アメリカではだいぶ異なるのかもしれない。でも日本でも所変わればそうした話をよく聞くようになるかもしれないし、日本の場合は特に当事者が声をあげない傾向があるので、調べてみたらもしかすると色々出てくるかもしれない。
北米のLGBTQムーブメントはそもそも警察からの弾圧への抵抗からはじまってるので、日本とは警察との歴史的な経緯が異なるため、警察に従順な日本でこの研修をそのまま輸入することはできないし、効果がないかもしれない。しかし、当事者の安全と人権のために、権力側とどのように実務的な協力関係を作っていけるかは参考になると思う。また、今激しさを増している在日差別や外国人差別についても、調整対策として参考になるかもしれない。にしても、これらのベースとなり、根拠となる国レベルの法律が日本にないのがネックだ。


■主催者団体 Bradbury Sullivan LGBT Community Center
■発表者のリズさんは著書もたくさん

WS報告「国レベル、地方レベルの政治の前線で、なぜ今これまで以上にLGBTQのリーダーシップが重要なのか」

今更ですが、言うまでもないですが私の英語力は低いんで、聞き間違い、勘違い、たくさんしてると思いますのでそこらへん差し引いて話読んでくださいね。


「国レベル、地方レベルの政治の前線で、なぜ今これまで以上にLGBTQのリーダーシップが重要なのか」
Why Leadership Matters Now More Than Ever: LGBTQ Leaders on the Political Front Line at the State & Local Level
1/20(金)10:45-12:15 

【プログラムから概要の訳】
オバマ政権が終わり、トランプが力を増してきている時、LGBTQコミュニティのための平等をおし進めて行く戦略は、行政機関と共に取り組んでいくことから、国中の500人以上のオープンリーLGBTQ政治家と公務員の影響を、機能させ、実行していくことにシフトしていくことでしょう。この分科会は、新大統領がホワイトハウスでの重役に任命する予定のいかがわしい個人を紹介することからはじまります。それは、LGBTQのアメリカ人にとって大きく影響し、連邦政府の官僚制度の隅々まで関連していくことでしょう。また分科会では、国政、地方レベルでLGBTQの議員または公務員として活躍する人たちのディスカッションパネルも持たれます。トランプによるLGBTQ政策へのバックラッシュから私たちのコミュニティを守るため、パネラーたちは、LGBTQの政治実務者同士の力強いネットワーキングを展開しています。主催者団体のビクトリーが、厳しい状況の政権の間、LGBTQコミュニティを勢力の強い効果的な運動にしていくために、またLGBTQの政治家と公務員の頑丈な共同作業を促進させるために、どのように取り組んでいるかも知ることができます。
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まず主催者からこの分科会が意図することを説明する挨拶があり、引き続きトランプ政権の閣僚たちがプロフィールつきで紹介された。スライドが変わるたびに、「イュク。。。」「マイガーっ・・・」「ダーン」など、会場から多数のうめき声があがるのが印象的。主催者団体のビクトリーは156人のLGBTQの政治家がトランプに向けて抗議文を送る運動を取りまとめて行ったそうだ。抗議文はビクトリーのサイトで読めるらしい。
一人目のパネラーのBrian Simsさん(37)というペンシルベニア州フィラデルフィアのある州)の下院議員でゲイの活動家の人が活動や現状の話。フィラデルフィアは州として、法律の面ではアメリカの中で一番LGBTQフレンドリーな州だとのこと。しかしまだ女性の参政権が十分でなく、議会にもっと女性が増えることでもっと政策はよくなるはず。「議会の家父長制体質に対抗する」みたいなことを言ってたんだけど、髭もじゃの中年男子が「家父長制(patriarchy)」って言葉を使ってるのが、新鮮。日本の男子政治家で家父長制って言葉を知ってて使ってる人みたことない。この人がそうしたベースで話すのも当然で、というのもゲイムーブメントがフェミニズムとは切っては切り離せない関係だし、事務所も女性学で修士・博士取ってるような女性スタッフでガチなフェミニズム運動ベースの人が多いからのようす。でもなんか女性は本質的に男性よりも感受性が高くて共感性があるから、政治に向いているとかそういう発言は大丈夫かしら、と思った。人種、階級、ジェンダーを超えて一緒にトランプ政権に立ち向かう、それが全て。

グループに分かれて実際に政治レベルで必要だと思うことは何か?の話し合い。私のグループでは、LGBTQのユースのためのシェルターが足りていない、ハウジングを制度的に改善できるとか、有色人種のトランス女性を取りこぼさないサポートを考えたい、特に拘置所・刑務所での待遇の改善とか、LGBTQにまつわる政府や自治体の情報に関するアクセシビリティの多面化などの意見が出た。全体のシェアの時間では、他のグループでの話し合いの内容が紹介され、例えば、LGBTQ~という頭文字でどれだけ当事者とその問題を正しく表現できるのか?とか、大学内でもっと選挙活動を活発にすべきとか、アライの政治家にLGBTQ問題について知らせるとか、多様な団体が問題の共通点を見出し、ひとつにまとまりアクションを起こすべきとか、キャンペーンを広げるための人員のトレーニングとファンドレイジングとか、LGBTQの問題は優先順位が低く見られがちなので、もっと中心に持っていくとか、人々に情報を提供して正しい選択をしてもらう、などなど。

その後、2人のパネラーがそれぞれの話。二人目は、Dr. Rachel Levineさんという医師でトランス女性。(たぶん50後半)州の保健省の長だって!医大の教授でもあるそうな。つい最近任命されたらしい。近年、仕事をしながら男性から女性にトランスしたが、職場でのそれについての障害や差別などはほとんどなかったそうだ。それについて本人は、医師と言う社会的地位のある職業であること、白人であることが関係していると言っていて、こういう特権に自覚的なのはいいなと思った。関係機関で会議をする際も、相手は一般健康についての専門家であっても、LGBTQのことは知らないことがあるので、自分がトランスであることは隠さずに、機会があれば教育的な意味での長い自己紹介をするなど自分のポジションだからやっていけることを実践していきたいとのこと。

三人目は、Carlos Guillermo Smithさん(36)というフロリダ州の下院議員でゲイの活動家の人。この人はラテン系で、選挙区はオーランド事件があった場所。ここでゲイとして立候補するのは、責任重大だしやることがたくさんあると思って挑んだそうだ。議員になろうと思ったきっかけは、HIVなどの活動をしているトランスの人たちがその厳しい状況を伝えに遠くから議会に出向いた時に、時間が制限されていて一人一言ずつしか言うことができなかったのを目の当たりにし頭に来て、これは自分がちゃんと発言できる立場になって伝えたいと思ったんだそうだ。ゲイの政治家で、政治になりたくてなったらたまたま同時にゲイだったと言う人がいるが、自分はそんなことは言わない。ゲイだからやることがあって政治家になったのだと言い切る。トランスのような最も差別されている人たちに寄り添って取りこぼすことのない戦略で行きたい、とのこと。

最後に質疑応答。質疑で発言する際に、質問者はどの州から来ていて何をしているのかも自己紹介していたんだけど、さすがにみんな活動家。政治家の秘書とか、大学のLGBTQサークルの代表とか、コミュニティセンターのワーカーとか。メモしてないからどんな内容か忘れた。残念。すごい拍手があがったり、フィンガースナップ(指パッチン)が鳴ったりといい話がされていたようなんだが、英語が早くて全然聞き取れなかった。指パッチンは、なるほどとか同感!という時に使うようで、拍手よりも話し手の話しを遮ることがないし、聞き取るのに支障が出ないので良いと思った。他のワークショップで、全体の意見をシェアする時なども、指パッチンが多用されていました。

LGBTQの問題は一部の人だけが関係する問題であって、話題のセンターにはなりにくく、いつも優先順位から外されてしまう、というのは日本でも同じだと思う。そうした時にどういう語り口でLGBTQの問題を見せるかというのがポイントになってくるだろう。平たく言えば、多様性の抑圧は全員の生き辛さにつながっている、あなたがマジョリティであっても多様性に寛容な仕組みの恩恵をたくさん受けることができるということだ。

オーランドの議員さん、もっとも差別されてる人に寄り添ってと言ってたのが印象的。トランスの友達もたくさんいるんだろーなと想像できた。しかし言うは易く行うは難し。正直、大変と思う。粗野、乱暴、汚い、意味不明のいちゃもんつけてくるとか、言わなくていいことずっと言ってるとか、聞いても何も答えないとか、いきなり怒ったり、叫んだり、明らかに薬物してるとか、明らかに酔っぱらってるとか、底辺を感じる集まりって底辺だからこそ荒れている。精神疾患、貧困、薬物/アルコール依存、虐待、DV、ホームレスなど日本に居る時よりそうした人口が多い気がする。トロントに住んでいて、日本に居た時よりそうした人に会う機会が多い。コミュニティセンターや教会がやっているトランスやセックスワーカー、貧しい人のための無料飯とか行くと、やべえと感じる人が一定いる。LGBTQ当事者であっても、ムーブメントとかどうでもいいっていうか、それどころじゃないんだろな、とも思う。こういう状況の人に、さらに意地悪をしたり、どこかに隔離したり、何かを強制することで事態が良くなるはずはない。必要なものやケアを提供し、笑顔になることをもっとやってもらうしかないと思う。

それとは別の軸で思い当たるのは、貧乏暮らしている何人かの友達は、ハリウッドのゴージャスな生活を紹介する番組とか、リッチな家族が家のリノベーションしてビフォアアフター比べる番組とか、ダイアモンドでデコレーションしてる何億の車みたいな世界のオークションとかそういうテレビが好きなんだよね。そんでお金があったらなーと言う話をいつもしている。ソーシャルメディアが発達して鬱が増えているというのは、比べる先が増えて自己肯定感や価値観が相対的に下がるからという研究がある。自分の人生で何に価値を置くか、優先順位を高くするかで幸せの感じ方も変わると思う。
いかに効率的か、いかに生産的か、お金が稼げるか、ばかりで人を図るようになっているので、無職の私は自分に価値がないと感じている。私は自分の年収がいくらでも、全く生産性がなくても、変わらず私の何かしらの良さをわかってもらえる社会、人間関係の中で暮らしたい。物ではなく、人に価値を置くような価値観になれば、結局は公民権運動が大事というところに行きつかないだろうか。


■Victory Institute highlights work of state & local LGBT leaders at Creating Change
学会のパネラーがそろっている写真が主催者団体のサイトにアップされていました。

パネラーについてはこちら
■Brian Sims
■Rachel Levine
■Carlos Guillermo Smith
カルロスさんの選挙結果。年収330万円まで出てる。

WS報告「NPOのための持続可能な資金調達術」

NPOのための持続可能な資金調達術」
1/20(金)9:00-10:30

【プログラムから概要の訳】
この強力な分科会では、組織のための持続可能な資金調達づくりを体系づけられたモデルで参加者に紹介します。あなたの組織にベネボンモデルを適用しながら、生涯を通じてスポンサーとなってくれる熱心な個人をつかまえる方法を学びましょう。この実際的で効果的な方法に取り組むため、参加者は組織の同僚やボードメンバー(理事を買ってでてる人)、ボランティアを連れてくることが望ましいです。
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さすがにプレゼン命のファンディング、プレゼンターが超プロ!過不足なく、きっちり明快な美しいプレゼンにうっとり!ベネボンはファンドレイジングコンサルタント会社で、創立20年目、発表者は11年働いているそうだ。LGBTQの非営利団体のクライエントもあつかっているそうだ。最初から一貫して力説されていたのは「Deep engagementがあればスポンサーには困らない」といこと。つまり、コミュニティの本当の需要を把握して、適切なサービスを行っているなら必ずスポンサーが付くし、実績を積めば、生涯スポンサーも獲得できる、とのこと。アメリカの非営利団体の運営費の内、8割が個人からの寄付らしい。少額からはじまり高額へ、そして生涯を通じて寄付をしてくれる個人スポンサーをどうやって獲得するのか?資料として下記のような円が描かれたプリントが配布された。

 

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  「導入として、はじめての人を引き込むための無料イベントを開催します。イベントは、まずはじまる前に自由時間を少し取り、主催者が個人的に挨拶をしてまわったり、イベントへのサインインや、参加者同士が交流できるように促します。次に、代表的な人、理事などからの挨拶から実際のイベントがスタートします。理事など実務を負っていない人をここに持ってくるのは、参加者とあなたの組織との仲介役をさせるためです。なぜ理事を引き受けているのか、それを話してもらうと良いでしょう。
次に、実務を負っているあなたの出番です。コミュニティに具体的にどのようにコミュニティに貢献しているか、しっかり説明しましょう。次はウォーキングツアーです。小さな資料室でも、棚でも、関わったこれまでのイベント資料をテーブルに広げておくのもよいでしょう。参加者を連れて行き、物理的な証拠を見せて活動と実績を説明しましょう。
次にボランティアや、サービスを受けた人に登場してもらいます。彼らには神話を壊すような話、(例えば、貧しい地域の学校に対して、文房具や学習機材などは申請すれば政府からお金が下りているはずという一般的な発想は神話であり、実際には機能していないなど)そして、具体的にどれだけ組織が提供するサービスが的を得ており、実際に助かったかとい忘れられないインパクトのある経験を話してもらいます。証人ですね。
そして、またあなたや運営メンバーの出番です。ニーズがあるのにできていないこと、コミュニティから新しいニーズが出てきていること、それを実現させるためにはいくらお金が必要であるかを説明します。
このイベントに参加するのは誰か?というと、あなたの知り合い、家族、友達です。あなたが自信をもってやっていることなのだから、まずは身近な彼らに協力をあおぐべきでしょう。そこからだんだんと広げていきます。それが確実です。」

うん。。家族、友達が協力してくれたらありがたいんだが、なぜだろう、頼みにくい。日本でLGBTQの非営利に関わって来て、家族やヘテロの友達に声をかけたことはあまりない。何か。。。関係ないと思われてるだろうとか、興味ないだろうな、とか思ってしまう。だいたいそもそも、何かをお願いするとか、頼むとかいうこと自体の敷居が高い。

  「イベントの後、2~3日以内に参加者に電話をかけます。目的は、A、イベントをどう思ったか?イベントがこちらの思った通りに受け取られているか確認して次回に活かします。B、何に関心があるかを尋ねます。コミュニティのニーズ探しです。具体的に何についてだったら、この組織に関わりたいと思うか?自分だったらどんなサービスを受けたいか?どんなサービスにならお金を出したいか?

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もちろん、参加してくれたことに対しても感謝を伝えましょう。この電話でのフォローで、あなたの団体に興味を持っている人を見つけることができるでしょう。その人が手伝いやすい方法を探しましょう。寄付の頼み方は、このような電話での1対1で、あるいはフリーイベント会場で用紙記入の方法があります。また、寄付の単位もプロジェクト毎に頼むか、3年や5年単位の数年続きで頼む方法もあります。
あなたのイベントが本当によかったら、あなたの団体についてその後も口コミで広がるはずです。「すごいよかったよ、あなたも行ってみたらいいよ!」これが図のサイクルの「1」の部分に集まる人の質を向上してきます。元々関心が高い人が集まる確率が増えて行き、寄付をしてくれる人の割合も増えて行きます。」

  「貧しい地域の小学校でのファンドレイジングイベントの例をご紹介します。この地域では子供たちに十分な教育資材がなく、進学率も低いため地域ぐるみでのいろいろなサポートが必要でした。一人につき年間6万円を数百人ですので、8000万円以上を目標としていました。800人規模で平日の朝に無料の朝食イベントを開催しました。もしあなたがこのイベントに招待されたとしたら、どう思うでしょうか。平日の朝早く起きて、会社に遅れるかもしれないと連絡をし、正直大して興味もなく期待もしていないイベントに、友達のメンツもあるしということで車を飛ばして会場にでかけます。
会場についてみると、子どもたちが笑顔で迎えてくれて、合唱団が歌っていてなんとも良い雰囲気です。テーブルには子供たちが将来なりたいものを描いたイラストや手紙が飾ってあります。組織の理事的な人がようこそと朝早くの参加に感謝してまわっています。無料の朝ごはんを食べながら、子供たちのこの団体のサービスによって達成できた体験について感動的なストーリーを聞いたり、人生が変わった卒業生たちのビデオを観たりしました。ずっと団体にたずさわっているボランティアが、これまでの活動や意義について語りました。主催者からはどのように子供たちを支援できるか、具体的な案が述べられ、寄付の仕方も説明されました。
このイベントの場合、用紙記入での寄付を募りました。

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選択肢をいくつか用意し、5年間1人の生徒のスポンサーになる=年間10万円。5年間10人の生徒のスポンサーになる=年間100万円。5年間クラスのスポンサーになる=年間250万円。そして、金額無記入の欄も用意しました。最終的には、1億5千万円の寄付を得ることができました。
私たちは様々な規模の非営利団体を支援しています。はじめてのイベントの場合は、もっと小規模で100人程度からはじめるなど、団体の規模と目標額などを検討して企画していきます。」

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ちょっとよく英語がわからなかったけれども、イベントは基本的に新規開拓の人集めのためにするものと、お金を集めるためのイベントと、寄付者向けの実績報告イベントがあるということでしょうかね?どうやってコミュニティのニーズを正確に把握しつづけていけるのか知りたい。組織の性質上、いったん同じことやるとずっとやってしまいそうなんだよね。
理論的にはうまくいきそうな話だけど、寄付をするという文化的な習慣がない日本でもできるんでしょうか・・・。やってみないとわかりませんが。ウェブでのファンドレイジングは何度かやったことはあるけど、全部プロジェクト単位だった。継続的な運営資金の調達としてウェブのファンドレイジングは難しそうなんだけどどうなんでしょうね。
 
日本では教会とかに行ったことなかったんだが、トロントに来て以降、西洋文化を理解するにあたって、キリスト教の理解は不可欠だと思い、教会に行ったりしている。幸い友達が教会マニア?で、ダウンタウンには200以上の教会があるのでいろんなところに連れていってもらってそれぞれの宗派の違いなども少しだけわかるようになった。教会のミサに出ると必ず寄付の時間があって、ボランティアの人がお盆や籠を持ってお金を回収して回るのだ。友達はどの教会に行っても、毎回なんぼか収めている。昔は教会によっては、収入の10%は教会に寄付することが決まりになっているとこもあったとか。多くの教会でミサの後、お茶会みたいなのがあって、無料のコーヒーやお菓子がふるまわれる。場所によっては無料のランチも出たりする。クリスマスディナーやサンクスギビングなど、無料の食事会があったり、フードバンクなど貧しい人に食べ物を配布する活動をしているところもある。
それらの慈善活動は寄付を基盤にして行われている。
現金を寄付することに慣れていない日本文化(昔はお寺とかであったんだろうけど)で非営利団体を運営する時の困難はどのあたりに解決策を見いだせるのか。いつも疑問。よくこっちの人に、アメリカの企業から助成金をひっぱってきたらいいと言われることもあるけど、どこまで現実的なのか。まあ、新しいことどんどんやって試してみるしかないけどさ。


■主催団体のページ Benevon 

http://www.benevon.com/

(サイトで公開しているビデオはこの分科会の内容とほぼ同じと思われます。55分)